中国の外交トップ、王毅・中国共産党政治局員兼外務大臣は、ヒマラヤ山脈周辺諸国による国際会議でチベット問題に言及する中で、チベットについて国際的に使用されている呼び方である「チベット(Tibet)」ではなく中国語表記でチベットを意味する「西蔵(Xizang)」との呼称を用いていたことが明らかになった。
チベット仏教の最高指導者であるダライ・ラマ14世らは、チベット自治区やその周辺の省の一部もかつてのチベット領「大チベット」だったと主張しており、王氏の発言には反発が拡がる恐れがある。中国国営中央テレビ局の国際放送「CGTN」が報じた。
王氏は10月5日、中国チベット自治区林芝市で開催された第3回トランスヒマラヤ国際協力フォーラムの開会式に出席し演説。その演説の英語版では、チベット自治区について「Xizang(西蔵)」との表記が用いられていた。
英語表記のチベットには、かつてのダライ・ラマが統治していたチベット国、現在のチベット自治区だけでなく青海省、四川省、甘粛省、雲南省のチベット隣接地域も含まれている。これが、ダライ・ラマ14世が定義した「大チベット」になる。
しかし中国政府は「『チベット』という名称は国際社会に地理的に誤解を招いており、それを是正しなければならない」などと主張。中国のチベット自治区に対して「西蔵(Xizang)」との呼称を用いたものといえる。
チベットやモンゴルなどの少数民族を管轄する中国共産党統一戦線工作部は公式アカウント「統一戦線ニュース」で、「中国外務省の公式文書にはもはや「チベット(Tibet)はない」としたうえで、「『チベット』という表記はダライ・ラマの利益に立つものであり、チベットの名前を変更することにした」と説明している。
すでに、これ以前の2019年以降、CGTN(中国中央電視台グローバルテレビジョンネットワーク)や中国共産党機関紙「人民日報」や同紙の国際問題専門紙「環球時報」、中国国営通信の「新華社通信」などの中国の公式メディアはすべて、「チベット(Tibet)」ではなく「西蔵(Xizang)」という用語を使用している。