「いつまでも若々しくいたい」という願いは永遠のテーマ。しかもそれは努力によって手に入ることもあるのだから、あきらめたくない。しかし、肌や体にいいとされていたものがあなたの老化をむしろ早めていたとしたら──知っておきたい、やってはいけない35のアンチエイジング術。
目次:
・やりすぎ注意のアンチエイジング集35
・監修
・習慣的なお肌のお手入れは強すぎる刺激に注意 (1)~(12)
(1)表情筋を鍛える
(2)小顔マッサージ
(3)リフトアップマッサージ
(4)化粧品を叩き込むようなパッティング
(5)スクラブ入りのクレンジング
(6)ピーリング
(7)毛穴パック
(8)高級なエイジングケア化粧品
(9)過度な化粧品信仰
(10)食材を利用するなどのオーガニック美容
(11)徹底的な紫外線対策
(12)シートマスク
・毎日シャンプーは間違い?正しいヘアケア(13)~(16)
(13)自宅での白髪染め
(14)毎日シャンプー
(15)わかめを食べる
(16)化粧品や洗顔料などをまったく使わない肌断食
・栄養が偏りがちに。食事と運動(17)~(28)
(17)1日1万歩のウオーキング
(18)肉を焼いたり揚げたりする高温調理
(19)特定の食品だけを食べるダイエット
(20)カロリーゼロ食品
(21)カロリーオフ
(22)糖質オフ食品
(23)りんご酢などのお酢を飲む
(24)野菜ジュース
(25)スムージー
(26)過度な糖質制限
(27)ガムを噛む
(28)22時から深夜2時までのゴールデンタイムに寝る
・経口摂取では意味のないサプリメント。副作用の恐れも(29)~(35)
(29)コラーゲン
(30)ビタミンCのサプリ
(31)グルコサミン
(32)コンドロイチン
(33)大豆イソフラボンのサプリ
(34)NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)
(35)漢方の防風通聖散
やりすぎ注意のアンチエイジング集35
加齢とともに悩みが大きくなるしみ、しわ、薄毛、白髪、抜け毛……。放っておくと“老け見え”一直線。アンチエイジングの落とし穴はそれだけではない。肌のためになることでも、過剰に行えば老化を加速させる。お手入れは習慣的に繰り返すものだからこそ、間違っていたときのダメージも大きい。今回は肌や体にいいとされているアンチエイジング手法の注意点を集めた。
監修
セルバンク代表 医学博士 北條元治さん
ナカデンビルクリニック院長 皮膚科医 中村仁美さん
女性のための代替療法研究所代表 佐藤忍さん
習慣的なお肌のお手入れは強すぎる刺激に注意 (1)~(12)
セルバンク代表で医学博士の北條元治さんは「(1)表情筋を鍛えるのはしわ改善に逆効果」だと話す。
「しわ取りの基本的な考えは、表情筋を動かさないこと。実際、しわができたところにボトックスを入れるのは、表情筋の動きをなくして目立たなくさせるため。過度に表情筋を動かせば、むしろしわができやすくなってしまいます」
アンチエイジングの落とし穴はしわ取りだけではない。女性のための代替療法研究所代表の佐藤忍さんが指摘する。
「美容情報は日々更新されており、10年前に提唱されていた常識は、いまや古くて間違った手法になっていることは少なくありません。“きれいでいたい”と願いながら、知らず知らずのうちに肌と体によくないことを日々繰り返していることもあるのです」
美容のためのお手入れは習慣的に繰り返すものだからこそ、間違っていたときのダメージも大きい。表情筋トレーニングと同じく老化を加速させるリスクがあるのは、(2)小顔マッサージだ。ナカデンビルクリニック院長で皮膚科医の中村仁美さんが解説する。
「マッサージで肌を摩擦すると、色素沈着や肝斑の原因になります。特に乳液やオイルをつけずに素肌を強くマッサージするのは絶対に避けてほしい。皮膚が引っ張られて、しわやたるみにつながる可能性も」
小顔マッサージ同様、(3)リフトアップマッサージに関しても、北條さんは「リラックス効果はあっても、マッサージで人の体が変化することは医学的に考えられない」と疑問視する。
肌へ強い刺激を与えるという点では、(4)化粧品を叩き込むようなパッティングもNG。力が強すぎると、肌を痛めつけるばかりか毛細血管もダメージを受けてしまい、肌のバリア機能を低下させる原因ともなりかねない。何より肌にダメージを与えるのは、角質をそぎ落とすことだ。
「“角質は落とした方がきれいになれる”という考えがあるが、角質は地肌を保湿して肌のハリを保ち、菌や細菌の侵入を防ぐバリア機能がある、肌にとって欠かせないもの。(5)スクラブ入りのクレンジングや(6)ピーリングで角質を無理に落とせば、肌を傷つけてしまいます」(北條さん)
(7)毛穴パックにも肌ダメージのリスクは潜む。
「毛穴の汚れだけではなく皮膚の表皮をはがすので、炎症を起こすリスクがあります。また、健康な角質細胞も取ってしまうので肌が乾燥したり刺激に弱くなってしまいます」(中村さん)
年を重ねるごとに増える肌の悩みを解決するため、日頃のケアに(8)高級なエイジングケア化粧品を取り入れる人も多いが、「高級化粧品は、値段に見合う効果があるとは限らない」と北條さんは注意を促す。
「まず知っておいてほしいのは、化粧品は薬ではないということ。さまざまな美容成分が配合されていますが、国内で発売されているものには薬理作用がありません。副作用がなく安全な半面、期待できるのは保湿効果くらいです。“シミが薄くなる”“リフトアップができる”など機能性をうたったものには期待しない方がいいでしょう」(北條さん)
中村さんも「(9)過度な化粧品信仰はよくない」と話す。
「市販の化粧品で主にできるのは保湿、紫外線対策、肌を清潔に保つことの3つです。
例えばニキビ対策の化粧品がありますが、ニキビはアクネ菌に感染したことによる炎症性の疾患なので、皮膚科を受診し治療すべき。紫外線対策も“黒くなりすぎる”ことは防げますが、シミを消すというのは医療行為であって化粧品や医薬部外品では効果はあまり期待できません。
(10)食材を利用するなどのオーガニック美容もやめた方がいい。化粧水などを手作りする人がいますが、自宅で作ったものは衛生面でも不安が残る。商品であってもアレルギー発症のリスクがあります」(中村さん・以下同)
肌のためになることでも、過剰に行えば老化を加速させる。ついやりがちなのは、(11)徹底的な紫外線対策だ。
「紫外線を浴びて肌に炎症が起きると、メラニン色素が増えてシミになるのは確かですが、排除しすぎるのは健康によくありません。紫外線を浴びることで、体内でビタミンDが合成されるので、1日15分程度は日光浴をした方が体にいい。ビタミンDは免疫力をアップし、骨を強くします」
美容家たちがこぞって実践する(12)シートマスクも、使い方を間違えれば逆効果だ。
「保湿は大事ですが、貼れば貼るほど効果があるわけではない。シートマスクに限らず、化粧品は安全性試験が行われ、使用上の注意が書かれています。それを守らずに使用した場合、トラブルが起きても補償の対象外となるので、どんな商品も決められた使用法や使用時間を守ってください」(北條さん)
毎日シャンプーは間違い?正しいヘアケア(13)~(16)
加齢とともに悩みが大きくなるのは髪の毛もまたしかり。薄毛、白髪、抜け毛は放っておくと“老け見”〟一直線。コスパ重視でケアしたいところだが、(13)自宅での白髪染めは、髪や頭皮に与えるダメージが大きく、避けるのが正解。白髪用は黒髪用のカラー剤より染色力が強く、特に市販品は美容室のものより刺激が強い。自宅でするなら、落ちやすいが低刺激のヘアマニキュアやカラートリートメントを使い、染めるのは美容室でプロに任せよう。
ヘアケアのためと(14)毎日シャンプーをするのも必要な皮脂を洗い流してしまうので禁物だ。
「毎日シャワーで洗い流せば、シャンプーは週に1 ~2度で充分です。できれば、シャワー前にブラッシングでほこりなどの汚れを落としましょう。洗う回数を減らした方が、髪の毛が丈夫になります」(佐藤さん)
(15)わかめを食べると髪が生えるというのも、いまや都市伝説だ。「医学的にわかめが髪にいいとか濃くなるといったデータはありません」(北條さん)
一方、「しすぎない」を極めることにも弊害がある。「(16)化粧品や洗顔料などをまったく使わない肌断食が一時期話題になりましたが、肌質によっては乾燥が悪化したり、肌荒れしたり、というマイナスリスクもあるので推奨しません。
スキンケアのやりすぎは禁物ですが、皮脂汚れはしっかり落として、保湿することは大切。水だけでは汚れは落ちません」(中村さん)
栄養が偏りがちに。食事と運動(17)~(28)
いつまでも健康でいたいと、せっせと取り組む習慣にもあまり意味がないものがある。代表的なのは「(17)1日1万歩のウオーキング」だ。
「年齢とともに筋力が低下するフレイル予防には1日10分の早歩きが効果的だというデータがあり、1万歩も歩く必要はありません。健康目的の運動に重要なのは、ただ歩くのではなく、筋肉を動かすことです。歩数を増やすよりも、姿勢を正して筋肉を動かす歩き方を1日10分すれば、基礎代謝を高め、免疫力をアップさせ、衰えない体を作ります」(佐藤さん)
良質なたんぱく質の摂取も筋肉維持に必須だが、(18)肉は焼いたり揚げたりする高温調理によって、老化の原因となる「AGE」(終末糖化産物)が5~10倍にはね上がる。調理法は煮る、ゆでる、蒸すのがベターだろう。
代謝が落ちたり太りやすくなるのも老化現象の大きな特徴だが、「りんごダイエット」「バナナダイエット」のように、(19)特定の食品だけを食べるダイエットも時代遅れ。
「飽きるのでリバウンドしやすく、栄養が偏ってかえって病気のリスクが高まります。また、どんな食品でもアレルギーになるリスクがあり、同じものを食べ続けるのは避けるべきです」(中村さん)
(20)カロリーゼロ食品、(21)カロリーオフ、(22)糖質オフ食品も避けるべき。
「そうした食品には人工甘味料が使われていることがほとんどで、人工甘味料は依存性が高く、なかには発がんリスクが指摘されているものもあり、体に悪影響を与えることは明らか。(23)りんご酢などのお酢を飲む習慣自体は体にはいいですが、成分表示をチェックして、添加物が入っているものには注意してください」(佐藤さん・以下同)
体内で増える活性酸素を除去し、老化を予防するのに効果的といわれる(24)野菜ジュースや(25)スムージーを飲むという日課も傾倒しすぎてはいけない。
「市販の野菜ジュースには人工甘味料などの添加物に加え、尿路結石などの原因となるシュウ酸が含まれているものが多い。自宅で作るスムージーは市販の野菜ジュースより健康的ですが、組み合わせによっては糖分の摂りすぎを招くこともあり、体を冷やすことにもつながるので、冷え症の人は朝から冷たいスムージーを飲むのは控えましょう」
北條さんは(26)過度な糖質制限に警鐘を鳴らす。
「糖質、たんぱく質、脂質の三大栄養素はきちんと摂るべきです。糖質の過剰な摂取はよくありませんが、糖自体が体の老化を早めるというエビデンスはなく、むしろ糖質を控えることで死亡リスクが増えるという研究もあります」
近年では歯の健康が全身の健康と関連していることがわかっており、80才になっても自分の歯を20本保とうとする「8020」運動の重要性が説かれている。口腔環境を整えるために唾液を分泌させることにも注目が集まっているが(27)ガムを噛むのはあまり意味がない。
「虫歯を招く原因ともなるので健康な歯を維持したいならガムよりも、歯ブラシやデンタルフロスを併用してきちんと歯をきれいにすることの方が大事です」(佐藤さん)
(28)22時から深夜2時までのゴールデンタイムに寝るべしという神話も、いまは昔。佐藤さんが続ける。
「肌のために必要な成長ホルモンは、入眠後90分の間に分泌されることがわかっています。スマホの電源を切るなどして、最初の90分をいかに熟睡するかを優先しましょう。22時から2時の間は寝なければというプレッシャーはストレスになるばかりです」
経口摂取では意味のないサプリメント。副作用の恐れも(29)~(35)
老化防止をうたう「サプリメント」にも時代遅れのものはたくさんある。北條さんは「そもそもサプリには薬のような効果はない」と指摘する。
「肌に潤いを与える、丈夫な筋肉を作るなどの効果がうたわれる(29)コラーゲンはたんぱく質の一種で、体内でアミノ酸や糖などバラバラに分解されます。サプリで摂取しても体内でコラーゲンとして吸収されることも、ましてや増えることもありません。
(30)ビタミンCのサプリも若返り効果は期待できない。ビタミンC自体に抗酸化作用があるのは事実ですが、服用することでアンチエイジング効果があるという科学的な証明はありません」(北條さん)
膝関節の悩みにいいとされる軟骨成分の(31)グルコサミンや(32)コンドロイチンも、直接的に成分が膝に届くわけではない。痛みがあるなら、その部位に直接ヒアルロン酸などを注射した方がいい。
50才前後になると出てくる更年期症状。症状の緩和に有効とされる(33)大豆イソフラボンのサプリもさまざまなものが売られているが、中村さんはその効果に首をかしげる。
「大豆イソフラボンから腸内細菌によって作られるエクオールが、女性ホルモンであるエストロゲンと類似の働きをするので効果的だといわれています。しかし、イソフラボンからエクオールを作ることができるのは日本人の半数程度。作れない体質なら、摂っても意味がない。エクオールそのものをサプリで摂る方が効果的です」
若返りや健康寿命を延ばす効果があるとして注目を集めている(34)NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)も、まだ研究段階。
「NMNは代謝や免疫力を上げるという抗老化物質で、私自身もサプリメントや美容液を愛用しています。ただ、さまざまな研究結果があるので、今後はアメリカなどでの位置づけを注視していきます」(中村さん・以下同)
“NMNさえ摂っていれば老けない”という思い込みは危険だろう。
代謝を促進し、むくみを防止、ダイエット効果もあると話題となっている(35)漢方の防風通聖散は立派な医薬品なので、副作用に気をつけたい。
「漢方薬なので代謝をアップする効果はあるものの、強い薬のため体質に合わなかったり、副作用で肝障害を起こすリスクもあります。“防風通聖散をのめばいくら食べても大丈夫”などという口コミを目にしますが、依存するのは危険です」
ネットで情報収集が容易になったいま、あふれかえる情報から正しい情報を見極める力が必要だ。
※女性セブン2023年11月2日号