【週刊ポスト連載・医心伝身】発見時には既に進行していて手術困難になることも多い膵がん。切除不能膵がんは抗がん剤か、抗がん剤と放射線の併用治療しか選択肢がない。そこで新しい治療法として強力集束超音波(HIFU)治療の研究が進行中だ。検査で使う超音波の照射時間を長くし、強度を強めに照射することで、がんを死滅させる。重篤な副作用がなく、日帰り治療も可能な低侵襲治療となる。
食生活の欧風化や高齢化などにより、膵がんの患者は年々増加し、2000年に比べ2019年の患者数は約2倍の4万3865人に増えている。
膵がんの罹患数は男女とも6番目で、5年生存率は8.7%と、がんの中では最も低く、非切除率は逆に70~80%と高い。さらに手術しても2年以内の再発率が60%を記録し、予後もかなり悪い。東京医科大学臨床医学系消化器内科学分野の祖父尼淳教授に話を聞いた。
「膵がんは発見された時点で進行していることが多く、手術困難な場合は抗がん剤か、抗がん剤と放射線の併用治療しか選択肢がないため、より有効な治療法を探していたところ、超音波治療を知ったのです。エコー検査で使用するよりも照射時間を長くし、強度を強めたHIFUを使えば、がん細胞にダメージを与えられるのではと考え、2006年から研究を開始しました」
当時は疼痛緩和用に用いられていた中国製のHIFU機器しかなく、中国で使用法を学び日本に導入。動物実験などを経て、2008年から切除不能膵がん176例、延べ339例に対して臨床試験を実施、約65%で症状が緩和するという結果を得られた。
しかし、厚生労働省に先進医療の申請を行なったが、機器自体が中国製だからとの理由で却下。その後は東京女子医科大学、東北大学工学部と共同で国産治療機開発に着手したのである。