放送作家、タレント、演芸評論家、そして立川流の「立川藤志楼」として高座にもあがる高田文夫氏が『週刊ポスト』で連載するエッセイ「笑刊ポスト」。今回は、謎すぎる芸人、タブレット純について綴る。
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謎すぎるエンターティナー。奇人・変人・怪人でもある芸人。タブレット純。時に間違えてウォシュレット純とも呼ばれ、キャンドル・ジュンとも声を掛けられる。まさに時代が求めるキャラ、ジェンダーを軽々と超えるアクター。不思議すぎる経歴、知り合いの古本屋に店番で7年間(諸説あり)座っていた。その時ひたすら古いレコード、古い本を読み、1960年代1970年代のボーダイな芸能知識を身につけた(これが役に立ち、現在ラジオ日本の土曜日午後6時からたどたどしくなつメロを語っている)。
何を思ったかあの和田弘氏に誘われ最後の“マヒナスターズ”の一員に。ムード歌謡なぞ歌っていたが、恩師和田が死去後、なんだかんだ近付いてきて気がつくと浅草東洋館の舞台に立ち“ギター漫談”のようなことをやっている。身体の線は細く本当に長い長髪。ある日浅草でも初めての居酒屋へフラリ入る。席に着くとお店のお兄ちゃんが恐る恐る近付きタブにひと言。「おばさん、日本語分かる?」
後日タブレットしみじみと「店に入ってたった5秒間でふたつ間違えられた」だと。「おばさん」ではない。「日本語」は達者である。
先日高座を見ていたら「ロックも勉強しなくちゃいけません。本日はサザンをお届けしようと思います」。客席拍手。タブがおもむろに歌い出す。“足手まといだから~~ッ”客席、薄く気付き出す。タブ「お聴き頂きました。森雄二とサザンクロスのヒット曲“足手まとい”でした」。森雄二なんていう名をフルネームできけるのはタブの高座だけだ。
35年位前か、私が西新宿のマンションに住んでいる時、隣が森雄二氏だった。1階の飲み屋に一緒によく行った。そこへ玉袋筋太郎がよくのぞいた。私の家の真上がみうらじゅんの仕事場だった。一体どんなマンションなんだ? こんな縁で私が『足手まとい』のパート2の作詞をしてCDを出した事もある。たしか数年前、森氏は亡くなったのでは……合掌。
関東の芸人のあとは関西の人、私が珍しく好きな大阪の人、桂雀々。久しぶりに会ったので「日本シリーズは関西対決だし盛りあがってんじゃないの?」「それがここへ来て谷村新司、財津一郎、もんたよしのりとたて続けに関西ですわ。今年は上岡龍太郎さんも笑瓶も私が仲良くさせてもらった関西人の訃報だらけで。何があかんのやろ?」「きっとそれは万博の呪いなんじゃない」「ほんまや」。12月10日雀々の会(渋谷・伝承ホール)私がゲストで開催。
※週刊ポスト2023年11月10日号