病気に罹ったり体調を崩したりした時に服用する薬だが、その副作用には注意しなければならない。古代からの“超ロングセラーの薬”である「漢方薬」は安心だというイメージはあるが、実際は漢方薬なら安心かというと、そうとも限らない。長く用いられてきた自然由来の薬だからといって副作用がないわけではなく、そのほかの薬と同様、長期間のみ続けたり、過剰摂取すれば健康被害のリスクもあることは覚えておきたい。薬剤師の三上彰貴子さんは言う。
「多くの漢方薬には『甘草』という成分が含まれており、許容上限は1日7.5〜8g。これを超えて過剰摂取すると血中のカリウム濃度が低下し、手足がしびれたりだるくなったりする『偽アルドステロン症』を発症する恐れがあります」(三上さん・以下同)
三上さんは、漢方薬こそ服用に注意すべきと続ける。
「漢方には『証』と呼ばれる、西洋医学とは異なる診断基準があり、体質や体格、症状の出方など、全身を細かく診察して薬を処方します。例えば同じ『かぜ』でも、もともと体格ががっしりしていて元気がある人と、虚弱体質で気力も減退している人とでは、処方される漢方薬が異なります。
葛根湯の医療用の添付文書には“比較的体力がある人”と書かれています。つまり、かぜをひいて体力も気力もなくなっているときにのむと、逆に体力が奪われてしまう。高齢などで虚弱な人や胃腸の弱い人なら葛根湯よりも『香蘇散』の方がいいかもしれません」
自分の体に合ったものを病院で処方してもらうのがベストだが、市販の漢方薬を探すなら「満量処方」と書いてあるものを選ぼう。銀座薬局代表で薬剤師の長澤育弘さんは言う。
「漢方薬は古くから“レシピ”が決まっており、市販薬のうち『減量処方』と書いてあるものは、副作用などを抑えるためにそこから量を減らしたり、逆に増やしたりしているため、期待した効き目が得られないケースも考えられる。一方『満量処方』ならレシピ通りなので、効果が得やすいと言えます。
また、漢方薬はお湯でのまなければいけないと思っている人もいますが、いまの漢方薬はどれもフリーズドライの顆粒状なので、冷たい水で服用しても問題ありません。のむタイミングは重要で、食事の30分前がベスト。食後にのむと効果が3分の1近くにまで落ちてしまいます」(長澤さん)
※女性セブン2023年11月16日号