放送作家、タレント、演芸評論家、そして立川流の「立川藤志楼」として高座にもあがる高田文夫氏が『週刊ポスト』で連載するエッセイ「笑刊ポスト」。今回は、犬塚弘さんと、財津一郎さんについて綴る。
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「笑芸」を中心とした「芸能界」に住む人間にとって寂しい訃報が東から西から。最後の“クレイジーキャッツ”だった「ワンちゃん」の愛称で親しまれた犬塚弘(94歳)が亡くなった。テレビの普及はクレイジーの大活躍から始まった。ジャズマンからコメディアンへ。
その「頭のおかしな猫達」は『おとなの漫画』で登場。ついでに青島幸男という天才までが付いてきた。『シャボン玉ホリデー』『スーダラ節』そして「無責任映画」の数々。植木等、谷啓というピカピカのスターコメディアンの横で渋く微笑む忠犬のような犬がいた。猫達の中の犬なのだ。
本棚を探したら2013年に出版された『最後のクレイジー犬塚弘 ホンダラ一代、ここにあり!』が見つかった。犬塚と共に佐藤利明の著である。よくぞ出版しておいてくれた。感謝である。どんな方でも一冊分の人生は優にあるのだから出しておくもんだ。拙句で「逝く猫や昭和は遠くなりにけり」だ。
東の犬塚が「静」なら西の財津一郎(89歳)はみごとに体も動き、歌も達者な「動」のコメディアン。あまりにも有名なのは『てなもんや三度笠』に登場した謎すぎる浪人、怪人“蛇口一角”役。刀はペロペロなめるわ、「ヒジョーッにサビシィ~ッ」やら「やめてチョーダイ」など奇声を発する。日曜の夕方6時に放送していた人気コメディ、主演は“あんかけの時次郎”藤田まこと、“珍念”白木みのるである。
小学校から中学の山の手の小僧達にとって日曜日はとんでもなく心が豊かな時間だった。6時から大阪の30分「てなもんや」、6時30分から東京のアカ抜けた「シャボン玉」。東西の笑いを徹底的に仕込まれて7時からは「隠密剣士」という具合だ。ガキの頃大きくなったら忍者の霧の遁兵衛になろうと本気で思っていた(余談でした)。
若い人にとっては「ピアノ売ってチョーダイ」のCMがなじみ深いだろう。私は唯一財津さんに詫びなければいけないことがあってあれ程数十年にわたって「ピアノ売ってチョーダイ」と言われていたのに、一台もピアノを売らなかったことである。すいません。
私が「漫才協会外部理事」になってからナイツの塙会長と開催している「ザ・東京漫才」シリーズも第5弾。“どうする漫協!?漫協幹部緊急会議”と題して12月8日(金)東洋館。前売11月10日発売。私、ナイツ、ロケット団、宮田陽・昇、U字工事の出演。会長、副会長が全員集合。なにが決まるのか。
※週刊ポスト2023年11月17・24日号