『80歳の壁』など数々のベストセラーを生み出す和田秀樹医師が、「58歳から元気になる方法」をテーマに、現役世代の悩みに答える。来たるべき定年後の生活を思い浮かべ、「居場所が思いつかない」「収入がなくなったらどうしよう」といった悩みを抱く人は多いだろう。そんな不安に、和田医師が出す“処方箋”とは。
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「試すこと」を諦めない
平日は朝早くから家を出て、帰宅は家族が寝静まった深夜になることもしばしば──。そんなサラリーマン生活を長年続けてきた人が、定年後、「24時間365日、すべて自分の時間になる」と言われれば戸惑う気持ちになるのは当然です。「家にも外にも居場所が思いつかない」という不安を定年前から抱く人も少なくありません。
釣りや読書など、休日にひとりで楽しんできた趣味があるとしても、定年後もずっとそれに時間を費やしていたら、やがて飽きることもあるでしょう。かといって、暇を持て余すあまり、妻の外出にいつもくっついて歩くようになれば、やがて「濡れ落ち葉」(払っても払ってもなかなか離れない状態)と馬鹿にされてしまいます。
そんな人に私が勧めたいのが、「失敗してもいいから、自分の居場所が見つかるまで、なんでも試してみる」ということ。多くの日本人に欠けているのではないかと思うのが、この「試す」という発想です。
たとえば、外食する店を探す場合に「ハズレが怖いから口コミサイトを見ないと選べない」などは典型的でしょう。他人の評価を見て「良さそうだ」と思い、やっと行動する。「口コミ評価で高得点だからいい店だ」と思い込み、ようやく安心するというわけです。
でも、その評価がいつも正しいわけではないし、ランキング上位の人気店ばかり選んでいたら、予約が取りづらかったり、行列で長いこと待たされたりもします。
そうではなく、「いろんな店で試してみる」というつもりでまず行動してみてはどうでしょうか。街を歩きながら、なんとなく良さそうだと思える店にフラッと寄る。当たりもあってハズレもあるかもしれないけど、「あれこれ試す」という経験が続けられれば、きっと退屈を知らないで済むはずです。
定年後は時間だけはたくさん作れますから、そんなふうに「試せること」はいっぱいあります。特に、会社以外に居場所を思いつかないという人の場合、何が自分に合っているのかもわかりませんよね。