インターネット上にある情報の真偽を検証するファクトチェックという活動がある。取り組みが先行している欧米では非営利団体が中心となって行われているが、日本では活動が限定的だった。これまでの日本は、新聞やテレビなどマスメディアによる取材、組織的な情報編集と発信が機能してきたと言われてきた。ところが最近、日々のニュースを発信するマスメディア取材が、SNS発達による情報提供激増によって、以前のような機能を果たすのが難しくなっている。ライターの宮添優氏が、SNSを介しての情報提供に翻弄される人たちについてレポートする。
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最近のテレビのニュースやワイドショーなどを見ていると、必ずと言ってよいほど見かけるのが「視聴者提供」の映像や写真だ。それらの多くは、ネットユーザーがSNSにアップしたものでもある。注目される事件や事故を撮影したものがSNSに掲載されると、間髪入れずに「突然のご連絡すみません」と、テレビ局や新聞社、週刊誌などメディアのアカウントから「使わせて欲しい」旨の連絡が来て、ユーザーが承諾したのちに引用される。
「私は自宅近くの火災と、高速道路を走っていたときに事故に遭遇したときの二回、そのとき撮った映像をテレビ局に提供しました。最初は突然、SNSでダイレクトメッセージが来て、本当にテレビ局なのか、なりすましじゃないのか不安でした」
こう振り返るのは千葉県内在住の介護士・横田理恵さん(仮名・30代)。いずれの動画も、NHKを含めた大手キー局の複数社が、横田さんに接触し、映像を借りて放送したという。当初、ただ映像を提供するだけだと軽く考えていたが、予想以上に面倒なことが多かったと話す。
「映像を使わせてほしい、とメッセージが来て、全てに”いいですよ”と返していたのですが、返事をするだけで終わらなかった。それで済むテレビ局もあれば、映像の一部でなく全編を欲しい、目撃したときの状況を詳しく聞かせて欲しい、中には自宅で顔出しインタビューに応じてくれとの依頼もあり、やりとりが終わらない。結局、面倒になって、映像使用の許可を出しただけになりました」(横田さん)
それだけではない。テレビとのやりとりが一段落すると、今度は新聞社や通信社などからも同様の依頼がSNS上で寄せられ、横田さんは丁寧に返信していたのだが、そのやりとりを見た別のユーザーから「攻撃された」ともいうのだ。