ビジネス

学校給食の苦境 なぜまったく利益の出ないような仕事になってしまったのか

学校給食を食べられるのが当たり前ではなくなるかもしれない(イメージ)

学校給食を食べられるのが当たり前ではなくなるかもしれない(イメージ)

 食堂運営会社が経営破綻し、学校の給食が停止した問題が起きたとき、その影響が全国に及んでいたことに驚いた人も多いだろう。これは特殊な事例で、自分の身のまわりでは起きないと思っているかもしれないが、身近なところに迫っていると覚悟したほうがよい。公共サービスの維持に必要なものに対して、物価高騰や円高を反映させない硬直した価格設定の入札を続けている限り、働く人も集まらない。人々の生活と社会の変化を記録する作家の日野百草氏が、日本国民の栄養状況を改善した歴史を持ち、現在では食育という目的も担わされている学校給食を作る仕事についてレポートする。

 * * *
「年々やることが増えて、『もう無理』って年齢もあり辞めました。仕事量と給料も見合いませんし、体調管理や食事の面でも注意してきましたけど、辞めてよかったと思っています」

 長く学校給食に携わってきた給食調理員(本稿中の呼称として便宜上使う)だった、元パートの女性が語る。

 学校給食、いま日本の子どもたちに当たり前のように提供されてきた学校給食の運営受託業者が次々と撤退、もしくは倒産に陥っている。帝国データバンク調査(2022年度)によれば、給食業界374社のうち63%が業績悪化、34%の127社が赤字である。

 子どもやその父兄、そして取り巻く社会を支えてきた学校給食というこの国のインフラが、食のインフラがここでも破綻しかけている、つまるところ、事業として成り立たない。

 それは給食調理員もそうだ。とにかく定着しない、すぐ辞める、募集をかけても集まらない。少子化と人口減、価値観と生活様式の多様化によって、外食や小売り、介護、物流、建設と同様、「誰もやりたがる人がいない」仕事になりつつある。

パートで時給950円とかですよ

 本稿、学校給食は自治体によっても異なるため個々別の事例などは加味していない。あくまで「この国の学校給食の危機」が主題である。また、時給は改定前のものであり、現在ではもう少し上がっている場合もある。もっとも上がってはいても数円、よくて数十円。給食調理員に限った話ではないが、この国の賃金の上がらなさ、まるで何かの呪いでもかけられているかのようだ。

「生牡蠣とか絶対食べないようにしてましたよ。牛乳も危ないから控えてました。それに重労働ですし、数日で辞める人もいます。思ったよりきついってね」

 学校給食は短い時間で大量に作るという重労働、かつ個々人の技術を求められる。もちろん衛生面も徹底される。別の給食センターでアルバイト経験のある方の話ではプライベートでも生食禁止、刺し身もダメと、さらに厳しい指示のある現場もあると聞く。

関連記事

トピックス

2011年に放送が開始された『ヒルナンデス!!』(HPより/時事通信フォト)
《日テレ広報が回答》ナンチャン続投『ヒルナンデス!』打ち切り報道を完全否定「終了の予定ない」、終了説を一蹴した日テレの“ウラ事情”
NEWSポストセブン
青森県東方沖地震を受けての中国の反応は…(時事通信フォト)
《完全な失敗に終わるに違いない》最大震度6強・青森県東方沖地震、発生後の「在日中国大使館」公式Xでのポスト内容が波紋拡げる、注目される台湾総統の“対照的な対応”
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)の高場悟さんに対する”執着”が事件につながった(左:共同通信)
《名古屋主婦殺害》「あの時は振ってごめんねって会話ができるかなと…」安福久美子容疑者が美奈子さんを“土曜の昼”に襲撃したワケ…夫・悟さんが語っていた「離婚と養育費の話」
NEWSポストセブン
卓球混合団体W杯決勝・中国-日本/張本智和(ABACA PRESS/時事通信フォト)
《日中関係悪化がスポーツにも波及》中国の会場で大ブーイングを受けた卓球の張本智和選手 中国人選手に一矢報いた“鬼気迫るプレー”はなぜ実現できたのか?臨床心理士がメンタルを分析
NEWSポストセブン
数年前から表舞台に姿を現わさないことが増えた習近平・国家主席(写真/AFLO)
執拗に日本への攻撃を繰り返す中国、裏にあるのは習近平・国家主席の“焦り”か 健康不安説が指摘されるなか囁かれる「台湾有事」前倒し説
週刊ポスト
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
週刊ポスト
優勝パレードでは終始寄り添っていた真美子夫人と大谷翔平選手(キルステン・ワトソンさんのInstagramより)
《大谷翔平がWBC出場表明》真美子さん、佐々木朗希の妻にアドバイスか「東京ラウンドのタイミングで顔出ししてみたら?」 日本での“奥様会デビュー”計画
女性セブン
パーキンソン病であることを公表した美川憲一
《美川憲一が車イスから自ら降り立ち…》12月の復帰ステージは完売、「洞不全症候群」「パーキンソン病」で活動休止中も復帰コンサートに懸ける“特別な想い”【ファンは復帰を待望】 
NEWSポストセブン
「交際関係とコーチ契約を解消する」と発表した都玲華(Getty Images)
女子ゴルフ・都玲華、30歳差コーチとの“禁断愛”に両親は複雑な思いか “さくらパパ”横峯良郎氏は「痛いほどわかる」「娘がこんなことになったらと考えると…」
週刊ポスト
話題を呼んだ「金ピカ辰己」(時事通信フォト)
《オファーが来ない…楽天・辰己涼介の厳しいFA戦線》他球団が二の足を踏む「球場外の立ち振る舞い」「海外志向」 YouTuber妻は献身サポート
NEWSポストセブン
海外セレブも愛用するアスレジャースタイル(ケンダル・ジェンナーのInstagramより)
「誰もが持っているものだから恥ずかしいとか思いません」日本の学生にも普及する“カタチが丸わかり”なアスレジャー オフィスでは? マナー講師が注意喚起「職種やTPOに合わせて」
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「旧統一教会から返金され30歳から毎月13万円を受け取り」「SNSの『お金配ります』投稿に応募…」山上徹也被告の“経済状況のリアル”【安倍元首相・銃撃事件公判】
NEWSポストセブン