香港政府は1989年の天安門事件における中国政府の民主化運動弾圧を研究している中国系米国人学者、何暁清・香港中文大学准教授の香港での就業ビザ更新申請を却下した。これに伴い、同大は何氏を解雇した。
香港政府は近年、民主化団体が香港で運営していた天安門事件記念館を閉鎖するとともに、香港大学内にあった事件をモチーフにした彫刻を撤去するなど、民主化運動の弾圧姿勢を強めている。何氏へのビザ更新拒否については、「学問の自由に反している」との声が出ている。香港各紙が報じた。
何氏は米ハーバード大学フェアバンク中国研究センターで研究員を務めたのち、2019年に香港中文大学で准教授として採用された。
同大歴史学部のホームページによると、何氏は2014年に著書「天安門亡命者:中国の民主化闘争の声」を執筆するなど、中国の民主化運動とその帰結について、英語と中国語で多数の論文を発表していると記載しているが、何氏の解雇についての言及はない。
香港中文大学の広報担当者は、「非永住者の雇用は有効なビザの条件を満たさなければならない」と述べたが、何氏はメディアの取材に対して、「ビザの更新拒否が決まった時点で、大学から即刻解雇された」と明かしており、香港政府から大学側に何氏のビザ更新却下について連絡が入ったとみられる。
米国の人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」のソフィー・リチャードソン中国局長はソーシャルメディア「X(旧ツイッター)」に寄稿し、何氏を「著名な学者であり教師」と呼び、ビザ発給拒否は中国政府の「学術検閲と修正主義」の「さらなる証拠」だと指摘した。
香港政府は今年に入って、フィナンシャル・タイムズやエコノミストの記者や、英国の市民団体「香港ウォッチ」のベネディクト・ロジャース事務局長などに対するビザ発給を拒否している。
今年初めには天安門事件に関する書籍も香港の図書館から撤去されている。香港ではかつて数万人規模で、天安門事件の犠牲となった学生らの追悼集会が開かれていたが、いまでは天安門事件はタブー視されている。