「勝負めし」「対局おやつ」から「初手を指す前の一杯」、はたまた「今日の袴の色」まで──前人未到の八冠を手にし、21才にして“天才集団”と称される精鋭揃いの現役棋士たちの頂点に立った藤井聡太八冠(21才)。これまでもルーティンや食事、生活ぶりなどその一挙一動が話題を集めてきた中、現在注目されているのは若き天才が「いかに眠っているか」ということ。
《まずは寝ること。対局が続くと準備や振り返りに気が向くが、何より対局にいい状態で臨むのがいちばん大切なので、それを意識している。1日にだいたい7〜8時間眠れたらいいと思っているが、ただ家だとけっこう二度寝をしてしまうことがあり、結果的に10時間くらい寝てしまうこともあります。
計画では7時半くらいに起きる予定だが、結果として8時半とか9時になっている》
これは9月に静岡県で催されたトークイベントで藤井が、「勝負について特に大切にしていること」について語った内容の一部だ。
「将棋は“頭脳の格闘技”とも称され、どの棋士も睡眠を非常に重視しています。質を高めるため、眠る3時間前には食事を済ませることにしている棋士もいますし、毎日決まった睡眠時間を確保し、早寝早起きを実践することも重要視されている。そんな中で藤井八冠の“二度寝と寝坊”は異色の睡眠ルーティンとして話題を集めているのです」(スポーツ紙記者)
長らく体調やパフォーマンスに悪影響があるとされてきた二度寝と寝坊だが、取り入れ方を工夫すればこの上ない味方になる可能性があるということ。“竜王級”のポテンシャルを秘めた逆説の睡眠法を徹底研究した。
二度寝で脳内麻薬が出る
睡眠専門医で雨晴クリニック院長の坪田聡さんは「最新の研究によって二度寝には多くのメリットがあることが明らかになった」と話す。
「長らく“二度寝は日中のパフォーマンスを下げる”といわれてきましたが、朝起きてすぐに仮眠を取ると、つまり二度寝すると、起床後に爽快感や集中力がわいてやる気が出るという研究結果が出たのです。これは二度寝の最中に体を覚醒させストレス耐性を担うコルチゾールというホルモンが分泌されることが理由です」(坪田さん・以下同)
得られるのはエネルギーだけではない。
「コルチゾールに加え、二度寝の最中はリラックス効果を促すアルファ波の影響が強くなり、脳内麻薬の一種『エンドルフィン』も分泌されていると思われます。エンドルフィンには、心身の緊張を和らげたり、ストレスを軽減する働きがあるうえ、鎮痛効果もあるといわれます」
“朝寝坊は不健康を生む”という定説も、現代科学では否定されつつある。
「スウェーデンのストックホルム大学が約4万3000人の被験者を対象に研究を行った結果、週末に朝寝坊して長く眠ることで寿命が延びることが判明しました」(科学ジャーナリスト)