米国の「インターナショナル・クリスチャン・コンサーン(ICC)」(本部・ワシントンDC)は11月1日、年次報告書「2023年:世界のキリスト教迫害者」を発表し、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記らを「世界最悪のキリスト教徒迫害者」として名指しで批判した。金氏が選ばれるのは今年で連続3回目となる。
88ページに及ぶ報告書では、キリスト教信者に対して投獄や拷問、殺害などの迫害を行っている国の指導者や団体などが列挙されており、北朝鮮を含む10カ国をキリスト教徒迫害国としているほか、6団体をキリスト教徒迫害団体としている。
ICCは北朝鮮に20万人から40万人のキリスト教徒がいると推定しており、秘密裏に信仰を実践しているとされる。金正恩政権はキリスト教教徒が「米国帝国主義の代理人であり、(北朝鮮)政権とその神聖な指導者に対する脅威」であるとみなしており、北朝鮮では最高指導者以外に忠誠を誓うことは禁じられているという。また、北朝鮮ではキリスト教徒が信仰のために投獄されていると付け加えた。
金氏については「キリスト教徒を迫害するために政権のあらゆる機関を利用している。北朝鮮では、金正恩総書記は『中世の神聖な王以上の権力者』として神格化されており、それを脅かすいかなるものも激しく攻撃されている」と金氏を批判している。
実際に、今年4月には、北朝鮮の平安南道(ピョンアンナムド)では「地下教会」の信者ら5人が順川市のある民家で深夜に集まり、聖書を読み礼拝を行っていたところを保衛員(秘密警察)が急襲し、逮捕・連行されている。
また、咸鏡南道(ハムギョンナムド)の新浦(シンポ)では、どこかで手に入れた聖書をどのようなものかも知らないまま倉庫に放置していた女性が、近所の住民によって当局に密告され、「外国と通じたスパイ」との容疑をかけられて処刑されてしまったという。
米国務省は5月に発表した「2022年国際宗教の自由に関する報告書」で、「北朝鮮当局は、宗教活動を理由に、個人への逮捕、拷問、身体的虐待を続けている」と指摘するとともに、「米国政府は、多国間フォーラムや二国間対話、特に北朝鮮と国交のある国々との対話において、北朝鮮の信教の自由に関する懸念を表明している」としている。