ついに米中首脳会談、日中首脳会談に動いた習近平・国家主席。緊張緩和が進むのか注目されるなか、かつて“スパイ養成計画”として批判を受けた「千人計画」が密かに復活しているという。国際ジャーナリストの山田敏弘氏がその実態に迫った。
共同研究を名目に
最近、日本の公安警察関係者が水面下で注目している事案がある。世界でも圧倒的な技術を誇る日本のある紡績関係の製造企業が、中国企業に技術を盗まれている懸念が浮上しているのだ。中国企業は、共同研究を名目としてこの日本企業に接触し、紡績機械部品を入手したという。
公安警察関係者によれば、「問題はこの中国企業が、中国人民解放軍の武器装備品の研究開発を請け負う大学研究部門に、入手した紡績機械部品を納入していることだ」と言う。日本の先端技術が軍事転用される可能性があるということだ。
さらにこの中国企業の代表は、中国の国家的な人材招致プロジェクト「千人計画」に関与していたことがわかっている。
千人計画は、2008年に中国政府が海外で活動する研究者やエンジニア、起業家などから、技術や知的財産などを獲得する目的で立ち上げられた。
2015年以降は、習氏の主導で、「軍民融合」と、2025年までに中国を技術大国にする「中国製造2025」が国家の重要戦略になり、中国はスパイ工作などに加えて、千人計画で世界の先端技術を人材ごと獲得する取り組みをさらに強化してきた。千人計画は、開始から10年ほどで世界中から7000人以上の優秀な人材をリクルートしたと言われている。日本の一流大学の研究者らの関与も明らかになった。
だが、2018年にFBIがアメリカで千人計画などを介して中国に技術提供などを行なう研究者らを摘発。さらに、「技術流出などによる安全保障の脅威」として中国の技術窃取が世界的に大きな批判を浴びたことで、2018年から中国政府は千人計画の喧伝を停止し、同計画は休止状態に陥っていた。2020年4月には公式サイトも完全に消滅している。
ところが、最近、密かに千人計画が新しい形で復活しているという。その一例が、冒頭で紹介した日本の紡績関係企業に接近した中国企業である。