歌舞伎俳優・市川猿之助(本名・喜熨斗孝彦、47)が両親に向精神薬を飲ませ、自殺を手助けしたとして自殺幇助の罪に問われていた事件の判決公判が11月17日、東京地裁で行なわれた。地裁から言い渡された判決は「懲役3年、執行猶予5年(求刑懲役3年)」というものだった。
公判に現われた猿之助被告は細身の黒いスーツに紺のネクタイ。短く刈り込まれた髪の毛には白いものが交じり、体も一回り小さくなったように見受けられた。
法廷では手を前に組み、少し猫背気味でまんじりともせず判決を聞いていたが、量刑が言い渡されると、被告席の弁護人たちに深く一礼。その後、検察側を向くと、いままで伏し目がちだった目をカッと見開き、まるで歌舞伎の見得をするかのように、検察官を一瞥し、お辞儀をしたのだった。
現在は自宅に戻った猿之助被告を、一門の弟子たちや叔母が面倒を見ているというが、気になるのは「今後」だ。猿之助被告本人は初公判で「許されるのであれば、舞台に立ちたい。歌舞伎で償っていきたい」と復帰への意思を示していることが明かされた。だが、梨園関係者は厳しい意見を投げかける。
「歌舞伎の演目には親殺しを題材としたものもある。今、彼が復帰したとしてどんな気持ちでそんな舞台を見ればいいのか。また亡くなった父・段四郎さんの姿もちらついてしまう。正直言って、彼の舞台を『観たい』とは思えない」
そんな中、復帰前に「出家すべき」という声が出ているという。
「執行猶予がついたとはいえ、これだけのことをしたのだから、出家して亡き両親の菩提を弔いながら、全国を巡礼すべきとの意見が梨園では強い。猿之助さんは警察の事情聴取に対し、『家族会議をし、死んで生まれ変わろうと話し合った』と言っていましたが、そもそも輪廻転生の考え方を誤解している。あのような形で最期を迎えようとした猿之助さんが生まれ変わったとしても、来世で家族と良い人生を送るのは難しいでしょう。
ただ、あれだけの才能の持ち主ですから、いつかは復帰してほしいという気持ちはある。出家してしばらく経ってから復帰して、僧侶と歌舞伎役者の二足の草鞋という道もあると思います。
歌舞伎の演目の中では、主人公が世を儚んで出家するというものもあります。そういった人の侘しさや切なさなどを見事に表現してくれるのではないか」
※週刊ポスト2023年12月8日号