連日、満員御礼の続いた九州場所だが、親方衆の興味は土俵上とは別のところにあった。来年の1月場所後に行なわれる相撲協会の理事選である。出馬に野心を見せていた元横綱・白鵬の宮城野親方(38)が、本誌『週刊ポスト』の直撃になんと“不出馬”を表明。何が起きたのか。
福岡国際センターでの11月場所5日目の打ち出し後、理事選出馬を宮城野親方に直撃すると、「出ません」と一言。問いを重ねても「出ません」と繰り返し、浅香山親方(元大関・魁皇、51)を理事に推す伊勢ヶ濱一門の方針に従うのかと問うと、「はい。そうです」と応じた──。この本誌の直撃取材をNEWSポストセブン(11月17日付)で報じると、角界関係者に衝撃をもって受け止められた。
相撲協会の理事は定員10人で、角界に5つある一門(出羽海、二所ノ関、時津風、高砂、伊勢ヶ濱)がそれぞれの“利益代表”として理事を擁立。2年に一度の理事選は、事前の一門内の調整により無投票で終わるのが慣例だ。しかし、宮城野親方は“一門の論理”に反目するとみられていた。
「今年の5月場所中、所属する伊勢ヶ濱一門の食事会で白鵬が『来年の理事選に出るつもりです。一門の親方衆に迷惑はかけません』と宣言したのが騒ぎのきっかけ。メディアも白鵬の“野心”を報じて、注目を集めていました」(ベテラン記者)
小所帯の伊勢ヶ濱一門が擁立できる理事は1人。前回当選した伊勢ヶ濱親方(元横綱・旭富士、63)が今年1月に不祥事で降格となったが、協会は理事の補選を行なわず、同じ一門の浅香山親方を役員待遇に昇格させて審判部副部長の要職に配した。一門の後継理事とするレールが敷かれたわけだが、「そこに白鵬が出馬を宣言して割って入ろうとしていた」(同前)のである。
執行部が“包囲網”
理事選で投票権があるのは105(現在は「音羽山」が空席で104)ある年寄株を持つ親方衆だ。2010年には貴乃花親方が強行出馬し、一門の枠を越えて票を集めて当選した“貴の乱”の先例がある。宮城野親方は同様のかたちで当選を目指したが、
「“貴の乱”は八角理事長(元横綱・北勝海、60)と貴乃花親方の苛烈な闘争につながり、敗れた貴乃花親方は協会を去った。その再現に戦々恐々となった執行部サイドが今回は切り崩しを許さなかった」(前出・ベテラン記者)
というのである。
「白鵬に近い親方衆も、“貴乃花のようになってはいけない”と説得したといいます。白鵬の引退時に年寄名跡の手配に尽力した朝日山親方(元関脇・琴錦、55)まで猛反対していた」(若手親方)