ソフトバンクの元部長や元課長らが、同社事業への投資と偽り中国籍の男性らから数千万円を騙し取ったとして警視庁捜査2課に「詐欺容疑」で逮捕された。投資詐欺やコロナ給付金詐欺、海外に拠点を持つ特殊詐欺グループの摘発・逮捕など、手口が多様化した詐欺事件の捜査を現在重点的に手掛けている「警視庁捜査2課」だが、かつては大型汚職事件などの捜査で霞が関の高級官僚や永田町の政治家といった“大物”たちをも震え上がらせた実績で知られる。
その一つに数えられるのが、ある元特捜検事に対する執念の捜査だ。豊富な法律の知識と類稀(たぐいまれ)な捜査経験をフルに活用して「バブルの紳士」たちの跋扈をバックアップし、「悪徳弁護士」の呼称を“ほしいまま”にした男の逮捕に、情熱を傾けた刑事たちが警視庁捜査2課にはいた。そんな警視庁の「職人集団の物語」を、警察捜査の第一線をよく知る元マスコミ記者でジャーナリストの宇佐美蓮氏が紐解いた。
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「あの元『特捜のエース』の逮捕に向けて夏休み返上で捜査に打ち込み、過労死したと噂された刑事もいた。そんな職人集団が“2課”だ。だけどその職人集団も随分と様変わりしてしまった」──。
警視庁OBは感慨深げに語る。2課とは警視庁捜査2課。汚職の「汚」の字からサンズイと呼ばれる贈収賄や詐欺を手掛ける全国警察の捜査2課の中でも、厚生省汚職事件(1996年立件、現厚生労働省)で中央省庁の事務方トップ・事務次官を、秘書給与流用事件(2002年立件)で国会議員を逮捕するなど圧倒的実績を誇る。だから2課は数多あるが、単に2課と言えば警視庁捜査2課なのだ。特捜と略される東京地検特捜部と並び中央政界や省庁の経済事件ににらみを利かせる2大捜査機関の一翼を担う。
元「特捜のエース」とは伝説の特捜検事・田中森一(もりかず)。自民党全盛期に首相を務め「今太閤」と持てはやされた政界の絶対権力者・田中角栄を東京地検特捜部が総理在任中の収賄容疑で逮捕したロッキード事件(1976年立件)の捜査を指揮し、異例の人事で東大卒の指定席とされる検事総長に上り詰めた吉永祐介(2013年永眠)を同じ岡山大卒の大先輩と仰いだ。