中国の最高指導者、習近平国家主席の家族などの個人情報をハッキングによって入手し、ネット上で公開したなどとして、懲役14年の刑を言い渡されたハッカーの男性が、刑務所内で暴行され、精神に変調をきたした疑いがあることが分かった。男性の母親は弁護士を通じて、一刻も早く仮釈放するよう当局に求めている。中国では習氏ら中国共産党や政府、軍の最高幹部の個人情報は国家機密扱いとなっている。米政府系報道機関「ボイス・オフ・アメリカ(VOA)」が報じた。
この男性、牛騰宇氏(24)は2019年5月、習氏の長女とされる習明沢さんと習氏の姉の夫であるトウ家貴氏の個人情報をネット上で公開したが、この件で、広東省茂明市の警察本部は牛氏を含むハッカー集団24人を逮捕した。
ハッカー集団の手口はまず、習氏の18桁の身分証番号を割り出し、その登録された住所などの情報から、明沢さんやトウ氏の個人情報を探っていったという。
犯行当時20歳だった牛氏は警察の取り調べで、明沢さんらの情報をネット上に公開したことについて「面白半分でやった」などと供述したという。牛氏は裁判で、14年の懲役刑を言い渡された。牛氏はこの判決を不服として控訴したが、2年前の2審で懲役14年の刑が確定した。
牛氏は現在、広東省肇慶市の四会刑務所で服役中だが、牛氏の母親が11月24日、河南省の警察署からオンラインで牛氏と面会したところ、彼は「お前なんか知らない。出て行け」と言ったり、「誰だ、おまえは」などと叫んだりなど、もはや母親のことを認識できない状態になっていたという。
牛氏は2019年に逮捕されたあとの警察の取り調べでも、取り調べ官によってライターで火傷を負わされたほか、拷問用の「虎の椅子」と呼ばれる鉄の椅子に手足を縛りつけられたまま長時間、座らされるなどのさまざまな拷問を受けていたことが分かっている。さらに刑務所内でも暴行などを受けていたという。
母親は「できるだけ早く医療仮釈放を申請し、必要であれば海外に送って治療を受けさせたい」などと語っているという。