北朝鮮は11月21日、軍事偵察衛星「万里鏡1号」を打ち上げ、軌道への投入に成功したと発表した。その後、金正恩・朝鮮労働党総書記は、首都・平壌市の朝鮮国家航空宇宙技術総局の総合管制所を連日訪れ、衛星が撮影した画像を見ては笑顔を見せているという。
この衛星発射成功を契機に、板門店の共同警備区域(JAS)では北朝鮮の警備兵が拳銃を携帯するとともに、非武装地帯(DMZ)で長距離砲を配備するなど、軍事的な挑発と受け止められかねない動きを見せている。米政府系報道機関「ラヂオ・フリー・アジア(RFA)」が報じた。
朝鮮国家航空宇宙技術総局は、今年5月と8月の2回にわたって失敗している軍事偵察衛星打ち上げの成功に向けて9月に創設されたばかりで、技術者と科学者20人以上を同月、ロシア極東部のボストチヌイ宇宙基地に派遣し、宇宙衛星関連の技術指導を受けたことが分かっている。
この技術者らのロシア派遣は、金正恩朝鮮労働党総書記が9月のプーチン・ロシア大統領との首脳会談で直々に頼んだものとされる。
北朝鮮側は主にロケットの先端の偵察衛星とロケット本体の切り離しや、衛星部分を地球の周回軌道に乗せるタイミングなどについての技術指導を受けた。さらに、衛星が地上の目標地点の高解像度写真を撮影し、その写真を北朝鮮国内の衛星管制総合指揮所に送る信号伝送装置や信号処理システムなどについてもロシアの技術陣から指導を受けたという。
この結果、北朝鮮は首尾よく、軍事偵察衛星の打ち上げに成功、金氏は自らプーチン大統領に技術協力を要請したこともあって、打ち上げ翌日の22日と24日、25日の3日間、管制所を訪問。27日も管制所からこれ以前の3日間の報告を受け、米本土の米軍基地やホワイトハウスなど、撮影された写真をチェックし満足した様子だったという。
この衛星発射成功と軌を一にして、南北軍事合意に基づいて廃棄した非武装地帯の11カ所の監視所を再設置し、兵士を常駐させ、重火器などの搬入などを進めている。これは、韓国が北朝鮮の軍事偵察衛星打ち上げに対して2018年の南北軍事合意の効力を部分的に停止したことへの対抗措置でもあり、韓国側は圧力と受けとめ神経を尖らせている。
これについて、米国務省報道官は「北朝鮮の不安定な言動が地域の緊張を高めている」と指摘するなど軍事挑発の可能性が高まっていることに警鐘を鳴らしている。