厚生労働省がGLP-1受容体作動薬(以下、GLP-1薬)をもともと使われてきた糖尿病や新たに保険適用になった肥満症とは別に、自由診療で利用が広がっている美容や痩身の目的で使われて、薬の不足が発生することがないように、全国の保健関連の部門に対応を求めている。
2023年11月21日に、厚労省は全国の関連部門に対して要請をするための事務連絡を出している。
場合によっては納品しないことも要請
GLP-1薬をめぐってはもともと糖尿病薬として使われていたが、体重を減らす効果が見られたために、世界的に肥満を解決する可能性が注目されるようになった。
そのため糖尿病の薬であるにもかかわらず、本来の目的とは異なるダイエット目的で使う人が増え、薬が足りなくなっていた。
一方で、GLP-1薬の一つであるセマグルチドは、海外である条件を満たした肥満症への薬として承認され、2023年3月には日本でも肥満症の薬として承認された。ただし、薬が足りないため、発売は遅れ、この11月にようやく公的な値段が決まり、発売されることになった。
こうした動きを受けて、厚労省では11月21日、「適正使用推進ガイドライン」を公開。
さらに、厚労省は全国の都道府県などの保健担当部門に対し、保険適用された肥満症にセマグルチドを使うためには、特定分野の専門医が携わるなど、医療機関に一定の条件があることを強調した。
その上で、クリニックなどに薬を卸す医薬品卸売販売業者に対しては、保険適用された肥満症以外の目的で使われるのが明らかであれば、そもそも薬を納入しないような対応を求めた。
国も学会も保険適用外の使用に警告
ヒフコNEWSで伝えているように、GLP-1薬は美容や痩身の目的で使わないように求める意見が強まっている。
厚労省は2023年7月と11月にも、医薬品卸売販売業者に対して、薬が足りない状況が続く限りは、承認されていない目的で使われることが明らかなケースでは薬を納入しないなどの対応をするよう要請をしていた。
国も学会もGLP-1薬の美容や痩身目的での使用を控えるような状況が続くが、インターネット上では、オンライン診療でGLP-1薬の処方を受けられるような説明が変わらずに認められる。
今後、この薬がどのように使われていくのか、しばらく活発な動きが予想される。
参考文献
肥満症の効能又は効果を有するセマグルチド(遺伝子組換え)製剤に係る最適使用推進ガイドラインの策定に伴う留意事項について(周知)
肥満症の効能又は効果を有するセマグルチド(遺伝子組換え)製剤に係る最適使用推進ガイドラインの策定に伴う留意事項について
「肥満症治療薬は美容などに使う薬ではない」、日本肥満学会が声明
体重減少効果で注目の「GLP-1薬」、まれながら重い副作用の報告、米国医師会雑誌が注意呼びかけ
ダイエット目的の薬が不足、厚生労働省に糖尿病治療薬の要望書、関連団体が提出
「GLP-1ダイエット」広告、美容医療の新たな問題?厚労省が委員会で議論
【プロフィール】
星良孝/ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表、獣医師、ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。
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