国民皆保険のもと、昼夜を問わず病気やけがを治してくれる医師たちは、時に“神様”にすらなぞらえられる。しかし彼らも人間。目の前の患者の振る舞いや言動によって治療に対して全力にも、手抜きにもなることもあろう。4人の現役医師が忌憚なく語る。【全4回の第1回】
【座談会参加者】
A男さん(43才)/内科医。総合病院で高血圧をはじめとした生活習慣病の治療に従事。
B子さん(47才)/皮膚科医。大学病院での勤務を経て父の跡を継ぐ形で個人クリニック院長に。
C夫さん(51才)/外科医。大学病院でがん手術にあたる。
D美さん(31才)/産婦人科医。総合病院で妊娠・出産や、婦人科系疾患に携わる。
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A男:毎年思うことではありますが、この時期の病院ってまさに“戦場”。特にうちはインフルエンザや新型コロナの患者に加えて、予防接種を受けに来る人もいるから待合室はほぼ満席で、昼休み返上で診察室にこもる日々が続いてます。
B子:特にいま、インフルエンザがものすごく流行っているから大変そうですね。うちも2023年から予防接種を始めて、てんやわんや。年末年始の長期休みに向けて、いまのうちに薬をもらっておこうと来院する人も多いし、外来が普段より混むんですよね。
C夫:年末の外科も手術件数は大きく変わらないものの、休みに入る前に経過を見てほしいという患者さんでやっぱりごったがえしています。どこも一緒ですね。
B子:みなさん、どうやって一日を乗り切ってますか? いまの忙しい時期なんて正直なところ、一日中同じテンションで診療するのが難しくて。本来であればどの患者さんにも常に全力で向き合うべきですけど、どうしても“ムラ”が出てきてしまいます。
D美:私もそうですよ。もともと低血圧で寝起きが悪く、朝はなかなか調子が出ないタイプ。だから診療開始から30分くらいの「朝イチ患者」には、あまり調子が上がらないです。患者さんには申し訳ないけれど、こればっかりはどうしようもない(苦笑)。
A男:うちの病院は午前中の受付終了間際に飛び込んでくる患者さんが多いのですが、あれってどうにかならないんですかね? お昼休みが削られるのもつらいし、何より空腹だと集中力が大幅に下がる。しかもその患者さんの用件が「いつもより熱が0.3℃高いのが気になって」というようなどう考えても“不要不急”なものだと、つい「病院に来るより家で寝ていた方がいいのに」とイラっとしてしまいます……。
C夫:同僚の救命救急医が簡単に救急車を呼ぶ患者さんに「人騒がせだな」と毒づいていたことを思い出しました(苦笑)。ぼくも手術が立て込んでいるときに、術後の入院患者から「先生、売店の菓子パンはいつから食べていいですか?」と声をかけられたときに「すみませんが後にしてください」と冷たく言ってしまったことがありました。
B子:確かに「なぜ、いまなの?」というタイミングの悪い患者さんって、結構いますよね(笑い)。
A男:だけど「いつもと体調が違って、なんだか違和感がある」と言って来院した患者さんの検査をしたら、早期の胃がんだったというケースがあるのも本当で……。そういうときは、医師の使命感で“よくぞ来てくださった”とその判断をたたえました。
C夫:確かに、ちょっとした疑念や違和感が大きな病気の発見につながることって少なくない。そういう話を聞くと、やっぱり患者さんには何時も可能な限り寄り添わなければと身が引き締まります。
(第2回へ続く)
※女性セブン2024年1月1日号