台湾の最高検察庁は11月下旬、現役および退役した台湾軍人計10人が中国のためにスパイ活動を働いていた容疑で起訴した。一方、台湾の高等法院(高裁)高雄分院は10月25日、中国に軍事情報を漏洩していたなどとして、国家機密保護法違反罪で、空軍の退役大佐と現役士官6人の計7人にそれぞれ懲役6カ月から20年6か月の判決を言い渡しており、来年の台湾総統選を前に、台湾軍幹部によるスパイ事件の摘発が目立っている。
最高検察庁の声明によると、10人の被告のうち、3人の退役軍人は現役の軍人から軍事情報を収集し、「中国のための諜報ネットワークを構築した」として起訴。また、3人の現役軍幹部は、中国のために台湾の軍事機密をスパイする組織を構築し、他の4人の軍幹部に金を払って軍内の機密文書を入手させたという。
台湾の高等法院(高裁)高雄分院の事件では、退役大佐は2013年に現役を退いた後、中国で事業を行っていた際、中国の国家安全部要員と接触し、金銭目当てで台湾内に中国のためのスパイ組織を構築、8年間で6人の海軍や空軍の現役士官を抱き込んだ。中国からは1回で多ければ70万台湾元(324万円)の報酬を得ていたという。
蔡英文総統は2019年1月、政府の捜査機関、法務部(日本の法務省に相当)調査局の式典で「昨年は(スパイ行為など)国家安全に関わる事件で計52件、174人を摘発した」ことを明らかにした。
台湾の中央ラジオ局は法務部傘下の国家安全機関の統計として、台湾在住の中国スパイは5000人以上とも伝えている。
中国による台湾侵攻が懸念される中、総統選を前に水面下ではスパイ戦も激化しているようだ。