石油などに関する国連の制裁を回避するため、北朝鮮が太平洋上の島嶼国パラオやクック諸島、トンガ、ニヌエ、サモアなどから船舶の証明書などを取得し船籍を偽装、そうした北朝鮮所有の船舶が少なくとも17隻あることが明らかになった。
北朝鮮は、このような「船舶洗浄」計画を通じて石油の密輸を行っており、国際機関などの目を盗んで違法な取引を繰り返しているという。米国の民間研究機関である防衛高等研究所(C4ADS)が収集した内部データをもとに、AFP通信が報じた。
船舶洗浄の典型的な手口としては、ベトナム船籍だったタンカーの例が挙げられる。ベトナムの物流会社が10年間使用していた6万2000トンのタンカーは2018年に新しい所有者に買収され、新たにパラオ船籍を得て、新たに「スカイビーナス」という船名で運航していた。
この船の実質的な所有者は北朝鮮傘下の企業で、パラオの船籍として登録し石油運搬に使っていたという。
これらの船籍は手数料を支払えば各国の船舶登録簿に登録できるため、一部の太平洋島嶼国は北朝鮮などの密輸業者の標的になっているという。船籍所有に関しては、船舶が建造された国や所有者の国籍は関係がなく、実在の企業であることが証明されれば、簡単に船籍は購入できる仕組みだ。
タンカーは石油ターミナルで石油を積んだ後、公海上で、北朝鮮の小型船と合流し石油を移し替えて、北朝鮮に運ばれるという。
国連対北朝鮮制裁委員会の専門家パネルの報告書によると、2020年以降、パラオなどの太平洋島嶼国で登録された11隻の船舶が北朝鮮での燃料輸送に使用されていたという。
これらの船籍偽装の報告を受けたパラオ当局は2017年から2022年にかけて、北朝鮮の制裁回避に関与した5隻の船舶を登録から除外したほか、違法行為にかかわる前に2隻の船舶の登録を抹消している。クック諸島も2020年1月から2021 年4月の間に 3隻の船舶の登録を抹消したと発表するなど、北朝鮮の船籍偽装工作への警戒が強まっている。