ビジネス

職場で進む髪型、ネイル、タトゥーの自由化 人手不足解消の狙いが客離れも

アルバイトを集めづらいので「服装、髪型、ネイル自由」の条件で求人してみたところ……(イメージ)

人が集まらないので「服装、髪型、ネイル自由」の条件で求人してみたところ……(イメージ)

 自由であることは尊いと誰もが考えているだろうが、それは社会が円滑に営まれてこそ成立するものだろう。服装や髪型、タトゥーのありなしなどの自由が認められる時代なのだからと、その店や会社、コミュニティの運営を壊してまでその「自由」は導入されるべきものなのだろうか。ライターの宮添優氏が、責任を負わずに自由に振る舞う一部の人たちのために起きている混乱についてレポートする。

 * * *
 近年、従業員の髪型や髪色、ネイルなどを「自由」にする企業や商店の取り組みが注目されている。中には、従業員のタトゥーを許している場合もあり、外見にとらわれない考え方をいち早く取り入れようという姿勢は、大手メディアも手放しで称賛する傾向にある。

タトゥー解禁でコミュニケーションがとりやすくなった

 東京・渋谷にある若者向けアパレル店店長・清水晴太さん(仮名・30代)は、運営会社の意向により、数年前から自身の「タトゥー」を隠すことをやめたが、客からの反応は良好だという。

「扱っているアイテムは海外アーティストにちなんだものが多く、元々タトゥーのお客さんは多かったんですが、親会社の意向で従業員の格好は厳しく制限されていました。その制限も、この数年で段階的になくなり、私も自分のタトゥーを解禁したんです。タトゥーがきっかけで話が弾んだり、怖そうだけど接客は丁寧だとギャップに魅力を感じてくれたり、以前よりお客さんとのコミュニケーションは取りやすくなったと思います」(清水さん)

 自分らしい自由な格好で接客ができるようになり、従業員も自信に満ちた接客ができていると喜ぶ清水さんだが、一方でこうした見た目の「自由」は、時と場合を選ぶものであることは自覚しているという。

「行きつけの居酒屋も、従業員のヘアスタイルやネイルを自由にしていますけど、結局、それが衛生的であれば誰も文句は言わないんです。でも、いくら自由にして良いと言っても、不潔そうであれば客は不愉快だし、店も許すべきではない。実際、従業員が料理を持ってくるときに、ネイルが食器に触れたりするのを見ると、食べる気は失せますよね。件の居酒屋は後者で、特に文句やクレームを入れたわけではないのですが、私も次第に行かなくなっちゃいました」(清水さん)

 千葉県内にある老舗の人気飲食店で働くパート従業員・佐田幸子さん(仮名・50代)も、働く人たちに「自由」が取り入れられた結果、客離れが進んだと嘆く。

「若いアルバイトさんの定着率が低く“服装や髪型、ネイルも自由”にして、気持ちよく働いてほしいと、店長が方針を変えたんです。ところが、新規客は増えたものの、常連さんが来なくなりました。ある常連さんは、見た目が自由なのはいいけど衛生的ではなくなった、と仰いました。今更従業員の格好を元に戻しても、おそらく帰っては来られないでしょう。長年築き上げてきた信用がなくなったと、店長は頭を抱えています」(佐田さん)

関連記事

トピックス

“令和の小泉劇場”が始まった
小泉進次郎農相、父・純一郎氏の郵政民営化を彷彿とさせる手腕 農水族や農協という抵抗勢力と対立しながら国民にアピール、石破内閣のコメ無策を批判していた野党を蚊帳の外に
週刊ポスト
緻密な計画で爆弾を郵送、
《結婚から5日後の惨劇》元校長が“結婚祝い”に爆弾を郵送し新郎が死亡 仰天の動機は「校長の座を奪われたことへの恨み」 インドで起きた凶悪事件で判決
NEWSポストセブン
6月2日、新たに殺人と殺人未遂容疑がかけられた八田與一容疑者(28)
《別府ひき逃げ》重要指名手配犯・八田與一容疑者の親族が“沈黙の10秒間”の後に語ったこと…死亡した大学生の親は「私たちの戦いは終わりません」とコメント
NEWSポストセブン
「最後のインタビュー」に応じた西内まりや(時事通信)
【独占インタビュー】西内まりや(31)が語った“電撃引退の理由”と“事務所退所の真相”「この仕事をしてきてよかったと、最後に思えました」
NEWSポストセブン
伊勢ヶ濱部屋に転籍した元白鵬・宮城野親方
【元横綱・白鵬が退職後に目指す世界戦略】「ドラフト会議がない新弟子スカウト」で築いたパイプを活かす構想か 大の里、伯桜鵬、尊富士も出場経験ある「白鵬杯」の行方は
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問される佳子さま(2025年6月4日、撮影/JMPA)
《ブラジルへ公式訪問》佳子さま、ギリシャ訪問でもお召しになったコーラルピンクのスーツで出発 “お気に入り”はすっきり見せるフェミニンな一着
NEWSポストセブン
「日本人ポップスターとの子供がいる」との報道もあったイーロン・マスク氏(時事通信フォト)
イーロン・マスク氏に「日本人ポップスターとの子供がいる」報道も相手が公表しない理由 “口止め料”として「巨額の養育費が支払われている」との情報も
週刊ポスト
中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ(右・時事通信フォト)
《会社の暗部が暴露される…》フジテレビが恐れる処分された編成幹部B氏の“暴走” 「法廷での言葉」にも懸念
NEWSポストセブン
渡邊渚さんが性暴力問題について思いの丈を綴った(撮影/西條彰仁)
《渡邊渚さん独占手記》性暴力問題について思いの丈を綴る「被害者は永遠に救われることのない地獄を彷徨い続ける」
週刊ポスト
 6月3日に亡くなった「ミスタープロ野球」こと長嶋茂雄さん(時事通信フォト)
【追悼・長嶋茂雄さん】交際40日で婚約の“超スピード婚”も「ミスターらしい」 多くの国民が支持した「日本人が憧れる家族像」としての長嶋家 
女性セブン
母・佳代さんと小室圭さん
《眞子さん出産》“一卵性母子”と呼ばれた小室圭さんの母・佳代さんが「初孫を抱く日」 知人は「ふたりは一定の距離を保って接している」
NEWSポストセブン
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者と職業不詳・奥本美穂容疑者(32)が逮捕された(左・Instagramより)
《レーサム創業者が“薬物付け性パーティー”で逮捕》沈黙を破った奥本美穂容疑者が〈今世終了港区BBA〉〈留置所最高〉自虐ネタでインフルエンサー化
NEWSポストセブン