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ベストセラーとなった「鉄道地図」 異例の第2版刊行で増補された部分

鉄道路線の地図といえば、路線の部分だけをデフォルメするのが相場だった(dpa/時事通信フォト)

鉄道路線の地図といえば、路線の部分だけをデフォルメするのが相場だった(イメージ、dpa/時事通信フォト)

 何か調べ物をしようと思ったとき、最近は手元にあるスマートフォンでオンラインサービス、検索エンジンや辞書サイトなどを利用する人が多いだろう。鉄道の時刻表や乗換案内も同じようにネットやアプリで検索をしているだろうが、にも関わらず人気を集めているのが「鉄道地図」だ。地図の改訂としてはわずか3年という短さで新版が発売された『レールウェイマップル 全国鉄道地図帳』で盛り込まれたポイントからわかる地図利用の変化について、ライターの小川裕夫氏がレポートする。

 * * *
 2008年から2009年にかけて、新潮社が出版した『日本鉄道旅行地図帳』シリーズは日本全国の鉄道を網羅する地図として人気を博した。それまで鉄道路線の地図といえば、線路だけを強調した路線図ばかりで、目的の駅へ向かう経路が知りたい、という実用だけを求めていた。路線図は鉄道の見やすさを追求しているため、地形はデフォルメされる。ゆえに、自分が乗車している列車が海岸線を走っているのか、車窓から見える山はなんという山なのか、ということがわかりづらかった。だが、『日本鉄道旅行地図帳』は、車窓からどんな景色が広がるか、乗っている列車が日本のどこを走っているのかを把握しやすくなっている。また、日本をいくつかのエリアに分けて分冊したコンパクトな形式だったこともあり、旅のお伴にと手に取られ、鉄道地図ブームを巻き起こした。

『日本鉄道旅行地図帳』を新潮社がヒットさせて以降、各社が鉄道地図に参入。それからしばらくは、鉄道地図帳といえば地域ごとに分冊して発行するものだった。しかし、『マップル』でお馴染みの昭文社が、2020年11月に『レールウェイマップル 全国鉄道地図帳』を発売すると、鉄道ファンのみならず幅広い層から支持を受け、ベストセラーとなった。

「2020年は新型コロナウイルスの感染が拡大し、不要不急の外出を控えている雰囲気が強かった時期です。また、旅行に対しても自粛ムードが高まっていました。自動車・鉄道に限らず、外出・旅行需要が消失すれば地図の売れ行きは鈍ります。弊社は地図の会社ですから、コロナ禍は、かなりのダメージでした」と話すのは、昭文社出版メディア編集部出版編集課の工藤信広課長だ。

 コロナ禍で観光業に逆風が吹く中、昭文社は守りではなく攻めの姿勢に出る。以前に「北海道」・「東北」・「関東」・「中部」・「関西」・「中国・四国」・「九州」という形で7エリアに分冊して出版していた『レールウェイマップル』の内容を刷新し、ひとつに合本して出版することを決断した。

改訂ごとに廃線情報を遡って明治時代まで追加

 2020年に全国版を初めて出すにあたり、過去に出版した鉄道地図を合本しただけでは書店で手に取ってもらえないと注力した点がある。

 地図は絶え間なく新しい情報へと更新される。例えば、新しい高速道路が開通すれば書き込まれるし、市役所などが移転すれば、それも反映しなければならない。だからと言って、毎年のように地図を買い替える人は多くない。たいていの人は、少し情報が古くても地図を使い続ける。そこで、既存の鉄道地図帳を所有している人でも合本した『レールウェイマップル』を買ってもらえるように、工藤課長は「新たに盛り込みたい情報」を編集部から募った。

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