近年、ドラマを動画配信サービスで見る人が増加。それに伴い、民放各局とも配信に力を入れており、現在、大規模な無料配信キャンペーンを行っている。秋ドラマが放送中の今、視聴率への影響はないのか? 民放各局の狙いについて、コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
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現在、民放各局が大規模なドラマ無料配信キャンペーンを行っています。
まずフジテレビは11月11日から来年1月11日までの2か月間にわたる無料配信キャンペーン「フジドラWINTER!」を開催。『王様のレストラン』『恋人よ』など1990年代の名作から、今年のヒット作『女神の教室~リーガル青春白書~』『あなたがしてくれなくても』まで、初配信を含む新旧ドラマ50作超をTVerとFODで見ることができます。
次に日本テレビが12月1日にTVerと日テレ無料!(TADA)で、新旧ドラマ30作超の無料配信をスタート。『家政婦のミタ』『3年A組―今から皆さんは、人質です―』などのヒット作から、名作と名高い『Q10』、若手俳優が大量出演した『35歳の高校生』『先に生まれただけの僕』などの多彩なラインナップをそろえて来年1月中旬までの配信が見込まれています。
さらにTBSがTVerとTBS FREEで、新旧55作超のドラマ・バラエティを配信する「TBSドラマ・バラエティ冬のコレクション」をスタート。こちらも『週末婚』『池袋ウエストゲートパーク』『白夜行』『ROOKIES』『JIN-仁-』『逃げるは恥だが役に立つ』など各時代のヒット作がそろい、バラエティの人気番組とともに1月下旬までの配信が予定されています。
また、テレビ朝日も規模こそ小さいものの、『けものみち』『おっさんずラブ』『エイジハラスメント』『時効警察』『BORDER』などの過去作を配信しています。
※配信の開始と終了は各局・各作品によって変わるのでご注意ください。
なぜ民放各局はこれほど多くのドラマを全話無料配信するのか。まだ放送中の秋ドラマも多い中、視聴率や配信再生数への影響はないのか。その背景や狙いをひも解いていきます。
放送と配信の視聴者はかぶりづらい
各局の足並みがほぼそろい、これだけ多くのドラマが無料配信されているのは、「1つではなく複数のメリットがあるから」にほかなりません。
「TVerの配信再生数を稼ぎたい」という狙いがあるのは間違いのないところ。テレビ番組の配信再生数は毎年右肩上がりで増え、その上位を各局のドラマが独占し続けるという状態が続いています。
放送収入の低下に悩む民放各局は、それに代わる配信収入のアップを図るために、「配信再生数を増やしつつ、ウェブ広告の単価も上げていきたい」ところ。ネット中心の生活を送る人が増えているほか、YouTubeやNetflixなどを見ている層を取り込むことなどを踏まえて、まずはTVerの配信再生数をもっと増やすことが求められているようです。
以前は「旧作などを無料配信したら、新作の視聴率や配信再生数が下がらないか」という不安がありました。しかし、最近では「テレビのリアルタイム視聴者とネットの配信視聴者は、年齢・環境・嗜好などで視聴者層が異なる」「ドラマを好きな人は放送中の新作と過去に放送された旧作の両方を見る」「放送中の秋ドラマはすでに中盤から終盤に入った」などの理由から影響が少ないとみなしはじめています。これは過去に行われた無料配信キャンペーンに基づく根拠であり、「この程度の影響で済むのならやるべき」という許容範囲に留まっているのでしょう。
さらに、配信収入アップを図る上でもう1つの目的となっているのが、自局系列の有料動画配信サービスへの誘客。たとえば、「フジドラWINTER!」のリリースには、「なお、今回無料配信するすべての作品は、FODプレミアムでも配信されます。FODプレミアムでは、過去の名作から最新作、話題作まで、8万本以上の掲載コンテンツの中から好きな作品を好きなだけ、ノンストップで見ることができます」という文章が書き添えられていました。
「連ドラの“一気見”にハマった」「このドラマを見たら同じ俳優が出ていたあのドラマも見たくなった」「同じ脚本家のあのドラマも続けて見たい」、あるいは「無料配信期間中に全話見られなかった」「キャンペーンページを見たら無料配信が終わっていたが見たくなってしまった」などの理由から有料会員になってもらうことを期待しているのです。U-NEXT、Hulu、FOD、TELASAと各局系列の動画配信サービスは、有料会員獲得に向けた競争が熾烈なだけに、他局よりも強いキャンペーンを仕掛けたいところでしょう。