WBCで侍ジャパンを日本一に導き、メジャーでは本塁打王とMVPを獲得するという偉業を成し遂げた大谷翔平(29)。その歴史的な1年は、FA移籍による超大型契約というニュースで締めくくられた。ドジャースへの移籍が決まり、10年総額7億ドル(約1015億円)という全世界のスポーツ界を通じての史上最高額での契約となった。ワールドシリーズ制覇を狙えるチームへの移籍で盛り上がるのは当然だが、不安要素はないのだろうか。
ドジャースは、エンゼルスと同じ「ロサンゼルス」を冠する。本拠地は直線距離にして45キロ。ただし、ア・リーグからナ・リーグへの移籍となり、何より違うのはドジャースがメジャー屈指の強豪チームという点だ。2013年から地区8連覇。2014年以来地区優勝がないエンゼルスと違い、ドジャースはここ10年で9度の地区優勝を果たしている。
「大谷がドジャースを選んだのは、(米西海岸という)環境を変えたくなかったというのもあるだろうが、勝利を渇望するアスリートとしての選択という面が大きい」(スポーツ紙デスク)とされる。
ただ、強豪チームに移籍することで、弱小だったエンゼルス時代にはなかった困難が待ち受ける懸念もありそうだ。メジャーに詳しいスポーツライターの友成那智氏は、ここ数年のエンゼルスではなかった「チーム内競争」の問題に言及する。
「来季の大谷はトミー・ジョン手術から復帰するかたちになりますが、参考になるのが、フィリーズ外野手のブライス・ハーパー(31)。トミー・ジョン手術を受けて今年の5月2日から試合に出てきた。オールスター休みまでのシーズン前半はDHで出場し、後半戦からファーストを守るようになりました。もともとのポジションであるライトだと遠投が必要なため、ファーストで起用されたわけです。大谷は日本ハムで外野手として出場した経験があるが、来季はDHないしファーストが選択肢ということです。
では、ドジャースがどうなっているかというと、ファーストには名手のフレディ・フリーマン(34)がいるので、大谷との併用は現実的ではない。従ってDH専任ということになります。球団は今季DHで113試合出場したJ・D・マルティネス(36)を放出して大谷のために“枠”を空けると報じられていますが、一方で今季36本塁打のマックス・マンシー(33)が本来DH向きという事情もあります。マンシーは守備が得意でないが、大谷の移籍によってセカンドやサードを守らせる必要が出てくる。当面のドジャースが抱える問題はそこになるでしょうね」