毎朝8時が待ち遠しくなるNHKの連続テレビ小説『ブギウギ』。大熊社長役・升毅(68)、男橘アオイ役・翼和希、秋山役・伊原六花(24)──大阪の「梅丸少女歌劇団」を支える3人が、座談会で『ブギウギ』の魅力を語りつくす。【全3回の第3回。第1回から読む】
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升:僕は橘が社長室に乗り込んできて大熊社長と対峙するシーンが、やっていて久々に楽しかったです。僕の目をずっと見続ける翼さんの目を通じて橘の思いがどんどん伝わってきました。翼さんはテレビに出るのは初めてと聞いていたけど、やっぱり舞台をやっているのですごいパワーだなと。めちゃめちゃ怒った顔をする場面でしたが、内心はとても楽しかったです。
翼:本当ですか。絶対負けたらあかんと思ってました(笑)。実は私、セットの陰から升さんを見させていただいて、所作を研究していました。袴を着た時の腕の組み方から顎の引き方、眉間の皺はいいなぁなんて考えながら。普段、男性と共演する機会はないので、やっぱり余裕があると男の人って大人の色気があふれるんやなとか、ここぞとばかりに見させてもらっていました(笑)。
伊原:私は赤紙が届いた六郎ちゃん(黒崎煌代)が東京に来て、スズ子の横に寝ていて「姉やん、そっち行ってええか」という台詞にズキューンって心が掴まれました。戦死したと報せを受けたスズ子がステージで泣き崩れたところに六郎ちゃんが出てきて笑っていて……。そのあとの「ラッパと娘」の歌もですし、あの回はすべてが素晴らしく、泣けちゃうんです。
翼:最近、涙なしには観られないです。
升:『ブギウギ』の反響はすごくて、OSKの公演もお客様が一杯になったというニュースを見て嬉しかったですね。僕が大阪で舞台をやっている頃にOSKのポスターがよく貼ってあったんですが、一時は集客的にも大変な状況だというのも聞こえていたから。
翼:朝ドラ出演をきっかけにOSKの南座公演にもたくさんの方が足を運んでくださいました。あれほど満席の客席は見たことがなく感激しました。
升:もうドラマのオファーが来たんじゃない?
翼:いえいえ……。ご縁があればいいなとは思います。普段、男役しかやっていないので、女性役をやるには所作を見直さないといけません。スカートをもう10年以上はいていないので歩き方がガニ股だし、座るとつい足を開いてしまう(笑)。
伊原:いろんな番組に出させてもらうと、タレントさんにも『ブギウギ』ファンの方がたくさんいらっしゃるんです。「秋山」と呼んでくださって、感想や細かなシーンについて熱弁してくださる方がたくさんいます。
升:「ブギウギ観ているよ」と皆から声をかけていただくんですが、もう僕は全然出てへんけどなって思いながら聞いてます(笑)。僕が出ているからではなく、作品が面白いから観てくれている。『ブギウギ』の場合は、出演者としてもそれが最高に嬉しいんですよ。
翼・伊原:同感です!
(了。第1回から読む)
【プロフィール】
升毅(ます・たけし)/1955年生まれ、東京都出身。1985年に演劇ユニット「賣名行為」を結成。1991~2002年は劇団「MOTHER」を主宰。主な出演作にドラマ『沙粧妙子-最後の事件-』『高嶺の花』など。『風のハルカ』『あさが来た』などNHK朝ドラにも多数出演。
翼和希(つばさ・かずき)/大阪府出身。2013年、OSK日本歌劇団入団。男役。主演作『へぼ侍』(脚本・演出、戸部和久)が2024年1月に大阪、2月に東京で再演が決まった。2024年2月21、22日には『翼和希コンサートin浅草』が開催予定。
伊原六花(いはら・りっか)/1999年生まれ、大阪府出身。2018年にTBS『チア☆ダン』にて女優デビュー。NHK朝ドラ『なつぞら』などに出演。主演作のディズニープラスオリジナルドラマ『シコふんじゃった!』が配信中。
撮影/藤岡雅樹
※週刊ポスト2024年1月1・5日号