中国共産党の幹部養成・教育機関であるである中央党校の理論紙「学習時報」に「中国人民解放軍部内で敵対勢力の影響力が広く浸透しており、中国軍の統制に障害になっている」との論文が掲載され、中国軍内で思想の統一を強く訴えていることが明らかになった。
党の中堅幹部から高級幹部が研修を受ける中央党校の理論紙に、軍内の思想の分裂を危惧する論文が掲載されるのは異例だ。軍機関紙「解放軍報」が報じた。
論文は「世界クラスの軍隊と両立する文化的ソフトパワーの構築」と題するもので、中国軍の南方戦区司令部空軍政治工作部長の陳作松氏が執筆している。
この中では人民解放軍が直面しているイデオロギー的リスクを概説しており、「最近の軍内では情報化が進む中で、『西洋は強く、東洋は弱い』との捉え方をする向きが多い」したうえで、西洋を中心とする敵対勢力の考え方が中国軍内でより大きな影響力を及ぼしており、軍部内で誤った考えが広まっていると指摘している。
さらに「習近平主席は西側諸国のイデオロギーが中国へ浸透することに厳戒体制を敷いて、中国軍を世界一流クラスの軍隊にするという目標を掲げている。わが軍は忍耐強く、自信を持ち、党と習近平主席の両方に忠誠を誓うべきだ」と締めくくっている。
中国では1990年代に、西側の平和的な攻勢によって、ソ連や東欧諸国の社会主義体制が崩壊したように、中国共産党政権も崩壊の危機にさらされているという「和平演変」という言葉が頻繁に使われ、党内で危機意識が高まったことがあった。今回の論文も「和平演変」と同じような発想で中国の共産主義体制の危機が語られていると言えそうだ。
中国軍の台湾侵攻に対する警戒感が米軍内で高まる状況で、中国軍内でも対米軍戦略について様々な方策が検討されている。米軍の軍事戦略を分析していくなかで、中国軍関係者のなかには「米軍優位」との考え方を持つものもおり、今回の論文はそうした思考が拡がることに警鐘を鳴らす意味があるようだ。