今年6月、自衛官候補生の18歳の少年が岐阜市の日野基本射撃場で隊員にむけ小銃を乱射し2人が死亡、1人が重傷を負った事件。あれから、少年はどうなったのか。
「事件直後は『教官を狙った』など強い殺意を供述していましたが、その後、口を閉ざすようになった。最近は『銃と弾薬を自分のものにしたかった』『弾薬を奪うために邪魔な人を撃った』と供述する一方で、3人への殺意はいずれも否認するなど取り調べは難航している。11月下旬までだった鑑定留置も2か月延長され、少年事件としては異例の長さになっている。
自衛隊も事件後、射撃訓練は中止。11月に安全性の確認や隊員への教育が済んだという理由で再開されたが、再開初日から射撃場に出入りする車両に乗っていた20代の男性隊員が報道陣に向け中指を立てる行為が発覚。再び訓練が無期限見合わせになるなど残された隊員たちにも混乱は続いている」(地元紙社会部記者)
少年の一家は岐阜市内に10年ほど前に家族で引っ越して越してきた。近隣住民によると、近所付き合いはほとんどなかったようだが、家族仲はよく、6人きょうだいで上から3番目の次男だった少年は、幼い頃よく弟たちの面倒を見ていたという。
「幼少期から自衛隊に入ることを志望していて、暇さえあれば筋トレや入隊試験の問題集をやっていた記憶があります。高3の夏に友人と自衛隊の駐屯地を見学に行った際には大はしゃぎで、友達に色々説明していたと聞いています。その一方で、父親との折り合いの悪さも感じていて、“早く家を出たい”と漏らしていました」(高校時代の友人)
「そりゃあ申し訳ないと思うけど」
事件から約半年が経った11月末の夕方、実家を訪れた。家から出てきた父親に声をかけると、「メディアは信用してない」と表情をこわばらせたが、記者の質問に対して、こう答えた。
──息子さんと会いましたか?
「会えない。会えてない、喋っていない。顔も見てない。何も連絡来てないんだよ」
──鑑定留置が1月まで延長されましたので、なにかお話しになったのかと。
「何も話していない。接見禁止だもん。接見禁止になったから会えない。あんたらのほうが詳しいやろ」
──父親としてどのように思われてますか?
「そりゃあ申し訳ないと思うけど」
──お伝えしたい事はありますか?
「弁護士の人がついてくれてるんで、俺、なんにも言うこと出来へんもん。会えへんし、喋れへんし、(弁護士から)元気でやってるよとしか聞いてへんもん」
──会いたいというお気持ちは?
「会いたいけど、会えへんやもん。これだけのこと、やったんやで。分からん、何にもわからん。息子は自衛隊のこと話せへんもん。入隊してから一回も帰ってきてへんやで」
世間を恐怖に陥れた容疑者が起訴されるか否かの判断は、越年することになった。
※週刊ポスト2024年1月1・5日号