仕事をする、働く、新ビジネスを展開するというとき、人は純粋に利益だけを求めるのには耐えられない。誰かの人助けにもなる、社会の役に立つ側面もある、人々の未来に少しだけど貢献できるといった要素があってほしいと思うものだ。そういった人間らしい善意のために、慣れない新しい仕事にチャレンジする人もいる。一方で、人間の善き心につけ込む仕組みでビジネスを展開する人たちもいる。ライターの宮添優氏が、「エシカル系」ショップの運営をめぐる不穏なビジネスの存在と、それによって負債を負った人たちについてレポートする。
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つい最近まで、ある程度の規模の街を歩けば必ず見かけた「唐揚げ店」や「高級食パン店」が次々廃業に追い込まれ、空き店舗と化している。少し前は「タピオカドリンク店」もそうであったように、日本の消費者の飽きの早さが原因とも言えるし、店舗が多すぎる飽和状態だったという見方もあろう。
そんな中、人知れずひっそり……そして続々と閉店しているのが「エシカル系」と言われる、主に雑貨などを取り扱うショップだという。大手紙経済部担当記者が説明する。
「”エシカル”とは直訳すれば倫理的、という意味で、環境や人権、社会や地域へ配慮した良識的な商品を選ぶ消費活動やライフスタイル、転じて、エシカルなものを扱うお店を『エシカル系』と呼びます。各国がSDGs(持続可能な開発目標)を掲げる中で、この数年、あちこちに似たようなショップがオープンしていたんです」(大手紙経済部記者)
エシカルを意識するお客さんは頻繁に商品を買わない
エシカル系ショップは、時代の流れの中で大手メディアにも毎日のように取り上げられ、人気店には行列ができるほどであった。ところが、あっという間に閉店が続き、その姿を消しつつあるという。いったい何が起きているのか。
「唐揚げ店や高級食パン店のように、確かに一時的な人気はありました。でも、エシカルであることに配慮をすると、どうしても大量生産には向かない商品も多い。生産ロットが小さいから、とにかく置いてある商品の価格が高い。意識が高く、比較的裕福な中高年女性たちには一時的に支持されましたが、一般層にまでは広がらなかった、というのが現状でしょう」(大手紙経済部記者)
東京都在住の元会社員・中野美穂さん(仮名・50代)は、コロナ禍の2021年、東京都内のある商店街に念願だったエシカル系雑貨店をオープン。中野さんが数年前からハマっているという「ヨガ」関連のウェアなどをメインに、オーガニック由来の下着などを取りそろえた。