創価学会名誉会長だった池田大作氏(享年95)が遺したもの──。公称827万世帯組織を作り上げ、絶大なインパクトを残したことは間違いないが、残されたのは池田氏の「遺産」の行方と空席になった「ポジション」がどうなるのか、という難題だ。ノンフィクション作家・広野真嗣氏がレポートする。【前後編の後編。前編から読む】
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紆余曲折を経て築かれた財産は、相続税の申告期限となる2024年9月までに遺産分割が行なわれるはずだ。法定相続人は妻・香峯子(かねこ)氏(91)、長男で主任副会長の博正氏(70)、三男の尊弘(たかひろ)氏(65)、次男で故人の城久氏の2人の子(池田氏の孫)の計5人。香峯子氏は前掲の著書で3人の息子を「三巨頭」と喩えて紹介していた。
〈上の巨頭は、学者タイプで長老型の「おにいちゃん」でした。中の巨頭は学級第一の肥満型で、あだ名が相撲の「大鵬」、下の巨頭はすばしっこいんですけれど、ちょっと甘えん坊で、あだ名が「豆タンク」でした〉
味わい深い表現だが、池田氏の血を引く者たちをめぐっては遺産に加え、指導者の地位の継承という点でも注目が集まる。
カリスマ性は父親譲りとの呼び声が高かった次男・城久氏は1984年に夭折。三男・尊弘氏については池田氏の身辺のサポート役とみられてきた。残るは長男・博正氏で、岸田文雄・首相の弔問には原田稔会長とともに立ち会った。関係者の間では「学者肌でリーダーシップを発揮するタイプではない」と評される一方、「池田氏亡き後に空席となったSGI(創価学会インタナショナル)会長に就くのではないか」という観測が上がっている。
SGIは1975年、池田氏がグアムで設立した各国の学会組織の連合体で、現在、博正氏が副会長の職にある。国内では初代会長・牧口常三郎氏や2代会長・戸田城聖氏の歴史もあるが、海外は池田氏がゼロから開拓した。博正氏の「血筋」が持つ意味が、国内より重いという認識を複数の学会員が語った。
2008年には、日本人のブラジル移住が始まって100年を記念する式典に博正氏が参加し、その姿が聖教新聞の1面を飾った(2008年7月1日付)。皇室を代表して出席した皇太子(今上天皇)と並んで壇上に立つという大役を任されていたのだ。2024年1月26日は設立記念日の「SGIの日」。そこで空席がどうなるかに注目が集まる。