会社や自治体で毎年当たり前のように行われている健康診断。しかし、いくら適切な内容を受けていたとしても、医師の技術力の低さによって病気の発見が遅れることもある。実際、CT検査などにおいて「画像診断の見落とし」はしばしばニュースになっているが、がんのように重篤な病気の場合は、発見が遅れると死につながる。医療経済ジャーナリストの室井一辰さんによれば、「画像診断の腕は医師によってばらつきがある」と言う。
「院内で勉強会が頻繁に開催されて熱心に勉強している医師がいる一方で、勉強会すらない病院もあります。技術力におのずと差が表れるのは、仕方のないことです」(室井さん・以下同)
一見、どの医師がやっても変わらないように思われる聴診にも、腕の差が表れる。
「ただ心臓の音を聴いているだけではなく、医師としてのスキルが試されます。肺の音や血管の異常音などさまざまな音を聞き分けることが求められ、聴診だけで心臓音の異変に気づいて病気が見つかるケースもあります」
“基準値のウソ”を見抜けるかどうかも医師の腕次第だと、医療に詳しいジャーナリストの村上和巳さんは言う。
「健診時の血圧やコレステロール値など“検査値の基準は超えているが臨床的には正常”という状態は、臨床経験が豊富な医師でないとなかなかわからない。健診のみ行っている医師は単純に数値だけで判断して、異常と診断する傾向にあります」
では、信頼できる医師のもと、必要な検査だけを受けるためにはどうやって施設を選ぶべきなのか。
「総合病院に付随している施設は、日頃から臨床を経験している医師が多いため、信頼度は高いといえます。一方、人間ドックを専門にしている施設の医師は臨床経験が少ない可能性があり、アルバイトで技術力も低いケースも少なくありません」(村上さん)
人間ドックに力を入れる施設が多いのは、医療者側にとって健康診断や検査は「コスパがいい」という側面があるからだ。ナビタスクリニック川崎院長で内科医の谷本哲也さんが言う。
「病院や施設側にとってみれば、治療と違って異常の有無を判別するだけなので、特殊な技術は不要なうえ収益源にもなるというメリットがある。ただし見逃せば責任を問われるので、小さな異常でも問題視する傾向にあり、過剰治療や過剰検査につながりやすいのです」(谷本さん)
だからこそ「受ければ安心」なのではない。本当に自分にとって必要なのか、結果を信じていいのか、異常が見つかったら治療を受けるべきなのか──誘導に流されず、しっかりと見極めたい。
※女性セブン2024年1月4・11日号