まったく使われず無駄だというなら、さっさと処分すればいい訳だが、そう簡単にはいかない例もあろう。「住宅」の場合は改装費用もかかりその最たる例かもしれないが、もっと身近なところにも「簡単にはいかない」人たちがいるようだ。
30万円を超えたキャンプ用品
「まさに自宅の車庫の奥にうず高く積み上がっています。めちゃくちゃスペースを取ってるし、売れるものなら売りたいんですよ。でも、YouTubeでキャンプ関連の動画なんかはまだ見てるんで、いつか行きたい時に行けるなって思うと、やっぱり売りたくない気もしてきちゃうんです」
自分の煮え切らない態度に苦笑いを浮かべるのは、千葉県在住の会社員・藤島健さん(仮名・40代)。コロナ禍の巣篭もりを経験し、芸能人なども続々参入したことで、今ではすっかりお馴染みになった「キャンプ系YouTuber」にどハマりしたと振り返る。
「うちにも中学生と小学生の子供がいましてね、コロナで外に行けずかわいそうだから、キャンプに連れて行ってあげようと思ったんです。学生時代に何度もキャンプをしたことがあるし不安はなかったんですが、テント一式、調理器具に寝具など揃えると30万を超えました」(藤島さん)
キャンプ系YouTuberの映像を見ていたためか、知らないうちに用具へのこだわりが強くなってしまったと言う藤島さん。妻には「10万円程度」と些少申告しつつ、憧れのキャンプ用品一式を手に入れた頃には「毎週末は子供たちと大自然でキャンプだ!」と息巻いていたと言うが…。
「結局家族全員でキャンプをしたのは最初の一度だけ。妻が外は暑いし虫も多いしと最初に敬遠して、子供たちも三度目以降は”もういいや”って感じになってしまった。準備や後片付けも全部一人でやるのは確かに大変で、自分一人で行ってまで準備するのも面倒な気がしてきちゃいました」(藤島さん)
早速、妻からは「使わないんだし売ってきて」と急かされているというが、買い取り店には藤島さんのような、にわかキャンパー達が続々やってきているようで在庫過多気味。そのためか、思っていた以上に安い買い取り額を提示されてしまい「売るに売れない」と嘆く。一方でいまでも、わずかにキャンパーへの憧れは抱いているようで、やはりコロナ禍の遺産を積み上げざるを得なくなっているのだ。