消毒にならない消毒剤が処分できない
このように「また使うかもしれない」ものが積み上がっているだけならまだマシかもしれない。コロナ禍以降、全く必要としなくなったものが積み上がり、処分しようにも金がかかり、置いておくだけで金がかかってしまうモノであれば、その悩みはより深刻だ。都内にある中堅建設会社の総務担当社員・坂本亮さん(仮名・30代)が嘆く。
「コロナ禍の初期頃、世界的にマスクや消毒剤が不足しましたよね。その時、うちの会社は中国の取引先の伝手で社員用に大量の消毒剤を購入できたんです。当時は喜んだし、社員思いのいい会社だと思ったんですがね」(坂本さん)
ところがこの消毒剤、コロナ禍初期の混乱のどさくさに紛れて輸入された、アルコール度数が低く「消毒剤」としては販売できないというシロモノだったという。それが判明したのは、会社が大量に購入し社内で日常的に使い始めてから数ヶ月後のことだった。
「うちが買った消毒液がインチキだって報道されているのをネットで見つけたんです。購入決裁を取り仕切った役職者は真っ青な顔をしていました。社内でも、うちは怪しい消毒液をつかまされたと一部で話題になっていて、即回収です。正直、総務部管理の倉庫にまだ相当数が残っていますが、消毒液として使えないのに処分するにも専門業者にしかお願いできない。どうするんだって感じです」(坂本さん)
また、別のネット広告代理店では、コロナ禍に取引先から猛プッシュされて数十台導入したと言う高性能空気清浄機が、職場の悩みの種になっていた。社長の森田冬実さん(仮名・40代)が呆れる。
「職場のあちこちに設置されているんですが、ブーンという低音が耳障りで、フィルター交換の手間もかかるし、電気代だってかかる。半分はリース契約だったので返しましたが、契約より期間が短かかったので違約金を払いました。買った分は……減価償却が終わらないうちは意地でも置いておこうと思いましたが、とにかく社員から不評でね。会社の隅に5~6台が積み上がっています。誰かにあげたいくらいだけど、大きいし重いし誰もいらないって言うんですよ」(森田さん)
コロナ禍が完全に終っても、こうした負の遺産の一掃には、かなりの時間を要しそうだ。