中国では国有企業などに人民解放軍が管理する準軍事組織「人民武装部」という新たなセクションを創設し、企業内に部隊を駐留させ、企業が民衆暴動などで襲撃された場合、人民武装部隊が企業を防衛する役割を果たしていくことになったという。米政府系報道機関「ボイス・オフ・アメリカ(VOA)」が報じた。
人民武装部はすでに北京市や上海市、深セン市などの重要都市の国有企業のなかでも不動産部門を中心に設置されている。
上海市では国有企業を管理統括する上海市国有資産監督管理委員会傘下の上海都市投資集団(グループ)に創設されたほか、広東省でも「広東省都市集団」に設けられた。
さらに、湖北省武漢市の国有企業「武漢農業集団」や内モンゴル自治区に本社を置く乳業メーカー最大手「蒙牛乳業集団」など中国各地の23の大手企業に部隊が駐留しているという。
中国では2023年初めまでの新型コロナウイルス規制に反対する市民や解雇された労働者のデモや抗議行動が頻発しており、今年1~5月に中国全土の企業で140回もの労働者の抗議デモが起きている。これは中国経済の成長が鈍化しているためで、2016年以来の最多だ。
また、今後も、業績不振が続いている不動産企業を中心に民衆による抗議行動の激化が予想されている。不動産最大手の恒大集団が多大の負債を抱えて経営破綻状態に陥り、影響を被った市民らの抗議デモが多発したように、企業に対する民衆の視線も険しさを増している。
習近平指導部としては、暴動などが激化し、武装警察だけでは対処できない場合に備えて人民武装部の創設を進めているとの見方も出ている。