2023年は様々なモノやコトが節目の年を迎えた。そのなかでも大きなもののひとつが「関東大震災100年」だろう。近代日本における災害対策の出発点となった関東大震災は、自然災害からの復興という意味でも始まりとなっていた。ライターの小川裕夫氏が、震災復興をきっかけに日本での活用がさかんになったカナダ産木材による建築物についてレポートする。
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1923年9月1日に関東大震災が起こり、東京・横浜を中心に関東一円は壊滅的な被害を出した。死者・行方不明者は日本の自然災害史上で最悪の約10万5千人にのぼり、家屋の多くが倒壊もしくはその後の火災で焼失している。そのため、政府は関東大震災を機に地震対策を講じるようになった。発生から100年を迎えた2023年は、東京・横浜などでは関東大震災を後世へと語り継ぐ展覧会があちこちで実施された。
災害史に残る関東大震災だけに、その被災状況や行政の動きなどを記録に残し、多方面から研究・調査をすることは意義のあることだ。そうした研究・調査は定期的になされ、時に書籍として出版されることもあった。
また、災後の復興事業に目を向ける研究・調査も盛んで、それらは1995年の阪神・淡路大震災や2012年の東日本大震災に多少なりとも活かされてきた。そうした関東大震災における記録の中で、これまでカナダとの関係は語られることが少なかった。100年前の日本とカナダに、どのような繋がりがあったというのか。
19世紀の建国から木材産業が盛んだったカナダ
関東大震災からの復興事業では、被災地の平穏を取り戻す政策、人々の生活を立て直す第一歩として損壊・焼失した家屋を再建することが早急に求められた。しかし、関東大震災で損壊した家屋は数多く、とても日本国内の材木だけで賄うことはできない。困り果てた日本政府は、海外に救いの手を求めた。
こうした日本の窮乏に対して、救いの手を差し伸べたのがカナダだった。カナダは連邦政府を通じて、製材会社に木材の輸出を要請。これに応じたのが、ブリティッシュコロンビア州に本拠地を置くH・R・マックミランエキスポート社(現・ウェスタンフォレストプロダクツ社)だった。
「カナダは国土の多くを森林が占めています。そのため、1876年の建国時から木材産業が盛んでした。関東大震災が発生した頃は、多くの木材をイギリスやアメリカに輸出していました。ヨーロッパへの輸出は貨物船で運搬するので、東海岸からだと容易です。一方、森林資源が豊富なブリティッシュコロンビア州は西海岸に位置しているので、イギリスへの輸送は陸路と海路を経由で非効率的でした。ブリティッシュコロンビア州と日本は太平洋という大きな海で隔てられていて距離はありますが、船を使えば大量に木材を輸出ができます。それは、とても効率的です。そうした要因から、H・R・マックミランエキスポート社は日本からの要請に応じたのでしょう」
と説明するのは、ブリティッシュコロンビア州の木材を専門的に扱うBCウッド日本事務所のジム・アィバンオフ代表だ。