2024年はオリンピックイヤー。前回大会の東京五輪はコロナで1年延期となり、選手から観客まで様々な影響を被ったが、今夏のパリ五輪はどのような大会になるのか? スポーツ心理学者で、ソウル五輪シンクロ・デュエットで銅メダルを獲得した田中ウルヴェ京さんが予測する。
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東京2020五輪が新型コロナの影響で1年延期されたため、たった3年でやってくる夏季五輪です。選手にとっては代表選考大会の開催時期変更やスポンサー契約の延長など難しいところもあり、そのような状況下でのトレーニングでは困難なことも多かったと思います。すべての競技において選手が自分の力を思う存分発揮できること、それが開会式まで7か月となったいま切に願うことです。
ヨーロッパでの夏季五輪開催は2012年のロンドン以来で東京五輪同様に暑さも懸念されていますが、開催地のパリはいくつもの競技で大会開催経験のある大都市ですので、国際大会経験豊富なトップアスリートであれば環境面対策で大きな変化はありません。
パリ大会では、AIを使ったサービスや、「使い捨てプラスチックを使用しない初のメジャーイベントにする」とのイダルゴ市長の宣言をはじめ、SDGsに配慮した「新しい形の五輪開催」を目指しているので、選手にとっても地球の持続可能性にとってもプラスの作用を生み出す機会になるといいです。
オリンピックやパラリンピックは、開催理念としてパーソナルベストを発揮することが最も大きな目的です。同時に、各々の競技について世界中の国々に広く知ってもらうという絶好の機会でもある。
10月にアジア選手権で優勝し出場を決めたカヌーの羽根田卓也選手は、5度目の五輪とほかの選手にはない経験値を持ちながら、「カヌーという競技の素晴らしさ」を広めるだけでなく、地球上で生きる人間が誰しも抱えるキャリアやメンタルヘルスといった共通課題にも意識を持つ選手なので、グローバルな視野で日本選手団を率いてくれることを期待しています。また、パラリンピックで銀メダルを獲得した男子車いすバスケットボールも2大会連続メダル獲得へ向けて頑張ってほしいと思っています。
オリンピックやパラリンピックを通して、個々人がそれぞれ異なる角度から「する、みる、ささえる」も楽しむ大会となってほしいです。
【プロフィール】
田中ウルヴェ京/スポーツ心理学者(博士)。1988年にソウル五輪シンクロ・デュエットで銅メダル獲得。トップアスリートなどのメンタルトレーニングを指導。アスリートの学び場「iMiA(イミア)」主宰。慶應義塾大学特任准教授。IOCマーケティング委員などを務める。
※女性セブン2024年1月4・11日号