2024年の日本を占う上で重要な争点となりそうなのが皇室改革。スムーズな皇位継承や皇室の維持を図るため、女性宮家、女性天皇、女系天皇といった議論を進めることが喫緊の課題となっている。元衆議院議員で弁護士の菅野志桜里氏は、2024年の皇室について予測する。
* * *
2023年11月、自民党は「安定的な皇位継承の確保に関する懇談会」の初会合を開催しました。岸田首相の強い意向で停滞していた皇室典範の改正が2024年にいよいよ動き出す見通しです。
そもそも2017年に政府が天皇の退位に関する特例法を通した際、国会は「皇位継承にまつわる課題は先延ばしできない」とし、「速やかに検討して報告するよう」政府に求めました。ところが議論はなかなか進まず、その間に秋篠宮悠仁さまが年齢を重ねられ、天皇家の長女・愛子さまもご結婚が考えられる年齢になりました。
問題の核心は天皇陛下の皇位継承です。現在の皇室典範では、皇位を継承するのは父方から天皇の血筋を引く「男系男子」のみで、陛下の次の世代は悠仁さましかいません。そこで皇室典範を改正して、天皇の血筋を父方から受け継いだ女性の天皇である「女性天皇」や母方から受け継いだ男性・女性の天皇である「女系天皇」の皇位継承を認めるのか、それとも男系男子にこだわり続けるかの分岐点に立たされています。
永田町では、男系男子を支持する議員が増えているように見受けられます。自称保守派の議員は支持団体の手前もあって男系男子に固執するし、いわゆるリベラル議員や女性議員はこの問題になると沈黙を守るため、男系男子を主張する声はことさら大きく聞こえてしまう。繊細なテーマだけに、丁寧で静謐な議論が求められてしかるべきですが、広く国民と議論しようという姿勢が見られないのは残念です。
しかし多くの国民はこのままでは皇室が立ち行かなくなることを理解して、女性・女系天皇を認める方向になっています。男系男子にこだわれば皇太子妃が常に男子出産のプレッシャーにさらされて、天皇陛下と結婚する女性がいなくなることを危惧する国民も少なくありません。
永田町からは「女性天皇はいいけど、女系天皇はね……」との声も聞こえますが、女性天皇のみを認めて女系天皇を認めなければ、女性天皇は一代限りのピンチヒッターとなり、次世代に安定的な皇位継承は望めません。実際、2004年に小泉内閣が立ち上げた有識者会議は「女性・女系天皇を認めて、皇位継承順位は性別を問わず、第一子を優先する」との報告書を提出しました。
この報告書は現在でも通用すると私は思います。国会議員は責任をもって世論を巻き込み、皇位継承の安定のためにどんな法改正が必要なのか、女性・女系天皇をどう認めていくのか、積極的に議論を深めていくべきです。2024年は、懇談会の議論を基に各党が意見を取りまとめ、合意形成して法案化に向かうことを期待します。皇室典範の改正が新たなフェーズに入る一年になるでしょう。
【プロフィール】
菅野志桜里/弁護士。2009年、衆議院議員総選挙で初当選。3期10年にわたり衆議院議員を務め、待機児童問題や皇位継承問題、憲法改正などに取り組む。2021年に次期衆院選への不出馬を表明。同年11月、一般社団法人国際人道プラットフォーム代表に就任。
※女性セブン2024年1月4・11日号