2023年は全国各地でクマによる被害が相次いだ。人間の生活圏に出没する「アーバンベア」も問題となり、捕獲・駆除の強化が叫ばれている。その一方で、駆除を担う自治体への抗議電話が殺到しているという。果たして、クマと人間はどう共存していくべきなのか──。NHK自然番組ディレクターから「猟師」に転身し、著書『獲る 食べる 生きる 狩猟と先住民から学ぶ“いのち”の巡り』が話題の黒田未来雄氏が、実際にヒグマと対峙した体験をもとにレポートする。【全3回の第1回】
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ここ数年、ひたむきにヒグマを追いかけてきた。研究の対象ではなく、観光でもない。狩猟者の私にとって、ヒグマは獲物。その肉はとてつもなく旨い。
熊撃ちの常とも言えようか、私は四六時中、ヒグマのことを考えている。
今頃、どこにいるのか。何を食べているのか。どうやったら獲れるのだろうか。猟期以外であっても、山を歩けば心は無意識にクマに向き、両の目は常にあの毛むくじゃらで真っ黒な姿を探し求めてしまう。もはやヒグマに取り憑かれていると言っても過言ではない。