放送作家、タレント、演芸評論家、そして立川流の「立川藤志楼」として高座にもあがる高田文夫氏が『週刊ポスト』で連載するエッセイ「笑刊ポスト」。今回は、正月休みに読むのにぴったりな大衆芸能本について綴る。
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辰年。新年一発目、春までには必ず一回タツ(何を情けない話をしているのか)。正月休み、せめてこの時だけはゆっくり本を読みましょう。〈漫才〉〈テレビ〉〈沢田研二〉〈寄席〉〈任侠映画〉〈大河〉と私の大好きな大衆芸能だけを濃厚に書きしるした本が次々と送られてきたり書店でみつけたり。
何よりおどろいたのは1996年生まれと若過ぎる著者(神保喜利彦)がコアに奥深く「東京漫才」だけを掘り下げた『東京漫才全史』(筑摩書房)。本によると漫才という芸が東京に持ち込まれたのは大正初期だそうな。漫才協会の外部理事をつとめる私すら知らない知識がギッシリ。戦前の漫才から戦後我々が幼少期に見たトップ・ライト、てんや・わんやを経て「漫才ブーム」のツービート、セント・ルイス、今の爆笑問題、サンドウィッチマン、ナイツ。それは見事に調べあげ書かれている。脱帽。「東京漫才」を通しでこんなに書ける人はいなかった。圧巻の筆力。こんな若い人が出てきてくれると私も少し、ホッ。
テレビ番組について様々書いてきたものを一冊にした『発掘テレビ秘話 昭和編』(論創社)加藤義彦。バラエティ、ドラマ、アニメと章分け。みんなが忘れているようなポイントを取りあげ、読んでて私が逆に想い出す。伝説の演出家・久世光彦で、1982年いきなり飛び出したビートたけしを主演に『刑事ヨロシク』。このドラマを覚えているのは宮藤官九郎と太田光しかいない。この番組のプロデューサー小野鉄二郎が語っていて「たけしさんの毒舌と瞬発力のあるアドリブ」「毎回出来上がってきた脚本に高田文夫さんがギャグを書き足し、さらに本番でそれをたけしさんが自分流にアレンジしていったんです」とあり「なんとも独創的なドラマの作り方ではないか」とある。私はなんか、いつも久世さんに怒鳴られていたのを想い出すアハハ。
新書にして500ページを越える『沢田研二』中川右介(朝日新書)、ぶっちぎりの情報量で振り返る永遠のトップスターの闘いの軌跡。帯に「ジュリー、あんたの時代はよかった!」。
女優・南沢奈央がはまった落語の深さと楽しさ『今日も寄席に行きたくなって』(新潮社)、私も燃えに燃えたあの時代『東映任侠映画とその時代』山平重樹(清談社)、今や大河ドラマを語ったら日本でも3本の指に入ってしまう松村邦洋が2024年のNHK大河を解説する『松村邦洋まさかの「光る君へ」を語る』(プレジデント社)をいち早く出版。松村の口から「源氏物語」なんて言葉きいたことないけど大丈夫か?
※週刊ポスト2024年1月12・19日号