国際情報

【2024年の中国予測】「内憂外患」に陥ってもクーデターが起きない現状 軍は完全に「習近平一色」

社会学者の橋爪大三郎氏(右)とジャーナリスト・峯村健司氏はこれからの中国をどう見る?

社会学者の橋爪大三郎氏(右)とジャーナリスト・峯村健司氏はこれからの中国をどう見る?

 日本の安全保障の重大リスクが台湾海峡有事だ。1月13日には台湾総統選挙が行なわれ、事態の急展開も予想される一方で、中国では外相、国防相が相次いで解任されるなど習近平体制に不穏な動きも見られる。中国に関する著書が多数ある社会学者の橋爪大三郎氏と元朝日新聞中国特派員のジャーナリスト・峯村健司氏(キヤノングローバル戦略研究所主任研究員)が議論を交わした。【前後編の前編】

峯村:習近平政権の現状をひと言で表わすと「内憂外患」です。経済成長の予測はマイナスの可能性を指摘する見方があり、若者層の失業率も急上昇しています。最近の公表値では大卒者の失業率が20%を超えていますが、複数の中国政府系シンクタンク関係者に聞くと、「実態としては半数以上の学生が就職できない」と言っていた。若者の失業率が高まった時に社会不安が起きる。その例が1989年の天安門事件です。大卒者が就職できず、インフレが高まる中で起きた。

橋爪:中国はひどい病気です。慢性疾患に急性疾患が重なって、寝たきりになっている。市民社会なら、政権は潰れますよ。選挙があるから。途上国なら軍のエリートが、クーデターで政権を乗っ取るところだ。でも中国ではそのメカニズムが、どちらも働かない。軍は共産党が首根っこを押さえていて絶対に動けない。

峯村:民衆の不満は確かに溜まっている。そして事態が急変した時の最後のストッパーになるのはおそらく軍ではありますが、その軍も完全に「習近平一色」になっている。昔の毛沢東の時代であれば、林彪(元党副主席)や劉少奇(元国家主席)とか、クーデターを起こしそうな人がいっぱいいた。でも今はいません。その理由のひとつが「デジタル・レーニン主義」(※中国共産党がデジタル技術を統治に活用する手法に付けられた言葉)です。中国全土に数億個と言われる顔認証カメラが配備されていて、「天網システム」と呼ばれている。約4秒で20億人の中から誰がどこにいるか特定できます。軍人が「今からクーデターやろう」と言った瞬間に察知されてしまう。

外相も国防相も替えが利く

橋爪:その軍ではロケット軍の司令官らや国防部長が解任された。外務部長も解任され、もう死んだという話もある。

峯村:国防相とロケット軍の司令官らはかなり深刻な汚職だと聞いている。前外相の秦剛は、不倫相手の元香港メディアの女性キャスターが米国で代理母の制度を使って子供を生んだ。

 習近平政権が米国と対峙している時に、外交トップの国務委員で外相である秦剛の子供が米国籍を持ったことが問題視され、相当苛烈な取り調べを受けて自殺未遂を図ったと聞いている。

関連キーワード

関連記事

トピックス

『傷だらけの天使』出演当時を振り返る水谷豊
【放送から50年】水谷豊が語る『傷だらけの天使』 リーゼントにこだわった理由と独特の口調「アニキ~」の原点
週刊ポスト
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
《英国史上最悪のレイプ犯の衝撃》中国人留学生容疑者の素顔と卑劣な犯行手口「アプリで自室に呼び危険な薬を酒に混ぜ…」「“性犯罪 の記念品”を所持」 
NEWSポストセブン
原監督も心配する中居正広(写真は2021年)
「落ち着くことはないでしょ」中居正広氏の実兄が現在の心境を吐露「全く連絡取っていない」「そっとしておくのも優しさ」
NEWSポストセブン
フジテレビの第三者委員会からヒアリングの打診があった石橋貴明
《離婚後も“石橋姓”名乗る鈴木保奈美の沈黙》セクハラ騒動の石橋貴明と“スープも冷めない距離”で生活する元夫婦の関係「何とかなるさっていう人でいたい」
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
〈山口組分裂抗争終結〉「体調が悪かろうが這ってでも来い」直参組長への“異例の招集状” 司忍組長を悩ます「七代目体制」
NEWSポストセブン
休養を発表した中居正広
【独自】「ありえないよ…」中居正広氏の実兄が激白した“性暴力認定”への思い「母親が電話しても連絡が返ってこない」
NEWSポストセブン
筑波大学の入学式に出席された悠仁さま(時事通信フォト)
「うなぎパイ渡せた!」悠仁さまに筑波大の学生らが“地元銘菓を渡すブーム”…実際に手渡された食品はどうなる
NEWSポストセブン
新年度も順調に仕事を増やし続けている森香澄
《各方面から引っ張りだこ》森香澄、“あざとかわいい”だけじゃない「実はすごいアナウンス力」、「SNSの使い方はピカイチ」
NEWSポストセブン
4月7日、天皇皇后両陛下は硫黄島へと出発された(撮影/JMPA)
雅子さま、大阪・沖縄・広島・長崎・モンゴルへのご公務で多忙な日々が続く 重大な懸念事項は、硫黄島訪問の強行日程の影響
女性セブン
女優の広末涼子容疑者が傷害容疑で現行犯逮捕された(左/時事通信フォト)
広末涼子の父親「話すことはありません…」 ふるさと・高知の地元住民からも落胆の声「朝ドラ『あんぱん』に水を差された」
NEWSポストセブン
SNSで出回る“セルフレジに硬貨を大量投入”動画(写真/イメージマート)
《コンビニ・イオン・スシローなどで撮影》セルフレジに“硬貨を大量投入”動画がSNSで出回る 悪ふざけなら「偽計業務妨害罪に該当する可能性がある」と弁護士が指摘 
NEWSポストセブン
都内にある広末涼子容疑者の自宅に、静岡県警の家宅捜査が入った
《ガサ入れでミカン箱大の押収品》広末涼子の同乗マネが重傷で捜索令状は「危険運転致傷」容疑…「懲役12年以下」の重い罰則も 広末は事故前に“多くの処方薬を服用”と発信
NEWSポストセブン