中村雅俊(72才)は、俳優と歌手の“二刀流”で昭和、平成、令和にわたり第一線を走り続ける希有な存在だ。2024年は、4月に俳優、7月に歌手デビュー50周年となる節目の年。人生の転機となった作品や、これからについてインタビューを行った。第3回では、歌手活動について、そしてこれからについて語る【全3回の第3回。第1回から読む】
1974年のドラマ『われら青春!』で本格的な俳優デビューとなった中村雅俊。“このシリーズの主役は歌も出すことになっているから”と言われ、挿入歌『ふれあい』で歌手デビューすると、オリコンで10週連続1位を獲得するなど、大ヒットとなった。
“主役は歌うことになっている”から始まった歌手活動だが、1974年のデビューからコロナ禍で中断するまで、45年間休まずコンサートツアーを続けるほど打ち込んできた。
「歌手活動は俺にとっての“救い”でもあったんです。最初の頃は納得のいく芝居ができず、役者としての自分にふがいなさを感じていたときに、歌がヒットすることで自信につながりました。
なかでもコンサートは自分の歌を目的に来る人たちばかりですから、『自分は求められている』という現実を確信できた。俺は、歌とコンサートに救われてきたんです。
ただ、役者と歌手、どちらが欠けても中村雅俊ではなくなる。だから、どちらも100%でやってきました。これまでも、これからも、俺には芝居と歌の両方が必要なんです」(中村・以下同)
コロナ禍による1年の中断を経て、2021年からはフルオーケストラを従えたシンフォニックライブという新たな試みを続けている。
3年目となる2024年の公演は、2月1日、73才の誕生日に行われる。
「歌を生業とする人間にとっては3つ夢があって、1つはNHK紅白歌合戦に出ること。2つ目は日本武道館でライブをすること。そして3つ目がフルオーケストラをバックに歌うことなんです。幸せなことに、3つの夢をコンプリートできました。
いつもは4〜5人のバンド編成ですから、六十数人ものオーケストラの演奏で歌うなんて、本当に夢のようです。初回はバラードを多めに選曲していましたが、アップテンポのものをやってみたら意外とオーケストラに合うことがわかった。中村雅俊といえばバラードの印象が強いと思いますが、2月のライブでは、ぜひアップテンポな曲を楽しんでもらいたいですね」
『ふれあい』のような往年の名曲が、50年の歳月を経てどのような風合いを醸し出すのかも興味深い。
「たとえば曲中の『肩を抱いてほしい』という一節を取っても、20代のときは何も考えずに歌っていたけれど、その時々の自分、あるいは社会の状況で思う相手は変わります。そのように、歌詞の解釈や表現も変化しています」
ツアー名を『WHAT’S NEXT』と名付けた理由を次のように語る。