体の調子が悪いから薬を飲んでいるのに、その薬が体調悪化の原因だとしたら──医師と薬剤師が明かす実例と、あなたの不調を照らし合わせて確かめてみてほしい。【前後編の後編。前編を読む】
めまいやふらつきが「更年期のせい」と思われやすいのと同様、「疲れがとれない」のも年齢のせいにしがち。だが、こちらも薬の副作用である場合が少なくないようだ。薬剤師の三上彰貴子さんが解説する。
「高齢者は便秘薬として酸化マグネシウム製剤が処方されているかたが少なくない。市販薬としても売られる安全な成分ですが、服用が長期間になると血中濃度が高まる『高マグネシウム血症』になり、倦怠感や吐き気を感じる場合がある。ひどくなると意識障害に至ることもあります」
コレステロール値が高い人に処方される脂質異常症治療薬でも、倦怠感の副作用が出ることがある。三上さんが事例を話す。
「コレステロール値を下げる薬をのんでいた高齢女性が、だるさと微熱を訴えたので検査をすすめると白血球減少症という状態になっていることがわかりました。その後、免疫力が低下してしまったのか感染症にかかって71才で亡くなりました。まれな副作用ですが、ほかの薬剤でも起こります。服用後にだるさを感じたら、肝機能や白血球に異常をきたしている可能性もあるので一度医師に相談してください」
特にコレステロール値を低下させるスタチン系の薬には気をつけるべきと、日本初の「薬やめる科」を設ける松田医院和漢堂院長の松田史彦さんが指摘する。
「スタチン系の薬にはだるさのほかにも、筋肉が溶ける横紋筋融解症や夜ごとの夢にうなされる悪夢などありとあらゆる副作用がある。そもそもコレステロール値が高くないのに処方されていたり、薬で値が下がりすぎているケースも散見される。必要のない薬の副作用に苦しめられている人は多いです」
20〜40代の女性に特に多い頭痛も、実は薬が原因である場合が少なくない。はしぐち脳神経クリニック院長の橋口公章さんが指摘する。
「頭痛薬をのむ頻度が月に10〜15日以上あって習慣づいてしまい、のまないと痛みが強くなる状態を『薬剤の使用過多による頭痛』と言います。慢性的な頭痛に悩む人は薬がないと頭痛が起こるため、痛くなくても“大事な会議のため”“デートや食事会の予定があるから”と予防的に薬をのんでしまいがち。薬の量が増えると、脳が敏感になるなどし、さらに痛みを強く感じることにつながります」