今年8月で10年目に突入する六代目山口組と神戸山口組の「分裂抗争」。その行方の鍵を握る、六代目山口組の“次の体制”はどうなるのか。ヤクザ取材の第一人者であるノンフィクション作家の溝口敦氏とフリーライターの鈴木智彦氏が語り合った。【前後編の後編。前編から続く】
溝口:六代目山口組の司令塔・高山清司若頭(76)にはかねてから健康不安がある。高山若頭になにかあった時、代わりに抗争の指揮を執れる幹部がいない。加えてトップの司忍組長(81)も高山若頭のような強硬姿勢とは違う。
鈴木:高山若頭が不在になったら、抗争も自然消滅するでしょうか。
溝口:すると思う。正直、長期化する抗争に、組員はうんざりしているから。
鈴木:上層部はメンツの問題だろうけど、末端には生活がありますよね。ある年配の組員は、弘道会(司組長、高山若頭の出身母体)の所属でありながら住居を持てず、組事務所で寝泊まりしていた。シノギ(経済活動)は賭け麻雀で月収は10万円程度でした。
溝口:弘道会の看板でもそうなら、他団体はもっとしんどいだろう。
鈴木:高山若頭も末端の疲弊と、自身の健康不安は自覚しているはず。抗争が終わらなくとも、頃合いをみて、高山七代目山口組組長誕生という可能性はないでしょうか?
溝口:五代目の渡辺芳則はライバル組織に政権が移行し、無理矢理引導を渡されたけど、山口組のトップは原則終身制。トップの司組長が辞める可能性は低いとはいえ、山口組のなかで「いい加減退くべきだ」という声があるのは事実。司組長の「総裁制」に移行する可能性はあり得る。
鈴木:司組長の顔を立てるために「総裁」という地位をつくるわけですね。司総裁─高山七代目組長体制が実現する兆候もあるんですよね。