ライフ

2023年ベストセラー第1位『大ピンチずかん』はいかに生まれたのか 著者・鈴木のりたけさんインタビュー

鈴木のりたけさん/『大ピンチずかん』

『大ピンチずかん』の著者、鈴木のりたけさんにインタビュー

【著者インタビュー】鈴木のりたけさん/『大ピンチずかん』『大ピンチずかん2』/小学館/各1650円

【本の内容】
《大ピンチを しれば いつ 大ピンチに なっても こわくない》──こんな言葉から始まる『大ピンチずかん』は、日常生活の中で誰にでも起きうる大ピンチのシチュエーションが「なりやすさ」と「大ピンチレベル」とともに34個(+α)描かれる。『大ピンチずかん2』は≪大ピンチの りゆうを しれば いつ 大ピンチに なっても こわくない≫という言葉で始まり、33個(+α)の大ピンチのシチュエーションを、「大ピンチレベル」に加えて、その理由を「ドキドキ」「つらい」「ふあん」「はずかしい」「きもちわるい」「イライラ」の6項目から成るグラフで分析する。大人が読んでも隅々までたっぷり楽しめる、大ベストセラー絵本。

「この本の特徴は、子どもはもちろん、親も楽しめること」

 2023年、いちばん売れた本(トーハン調べ)が鈴木のりたけさんの『大ピンチずかん』である。「ぎゅうにゅうがこぼれた」「紙パックのジュースのストローがとれない」など、子どもたちが日々、直面する数々の「大ピンチ」を絵と文章にして、ピンチのレベルとなりやすさを数字や星の数で示す。『大ピンチずかん2』も出て、シリーズ累計125万部を突破している。

「児童書の売れ方ではないですよね。自分でもびっくりしています。『大ピンチずかん』の特徴って、子どもはもちろん、親も楽しめることだとぼくは思っていて、『これで大ピンチレベル30は低いよね』『お父さんも実際にこういうことがあった』とかいう話もできる内容です。だからこんなに、とくに絵本好きではない人にまで届いたんじゃないかなと思います」

 放送作家の高田文夫さんがいち早くラジオで取り上げ、朝日新聞でも「一難去ってまた二難、三難」「子供の世界とコントは『ピンチのあとに大ピンチあり』なのだ」と「売れてる本」という欄で書評していた。

「ぼく自身、本をつくるときには、自分で手を動かしながら、こうすればこう読まれるから、じゃあここを変えてみようとか試行錯誤を重ねているので、そういう推敲の作業がコントの笑いをつくる現場に近かったのかな、とうれしかったです。

『しごとば』という別のシリーズでも、子どもには難しいんじゃないかと思っても、具体的に、しっかり描き込んできました。読み聞かせとか、親と子が一緒にいる状況で機能する絵本にしたいなということはいつも考えていますね」

「大ピンチ」というのがまず、子どもにも大人にも刺さるパワーワードだし、それと「ずかん」との組み合わせに意表を突かれる。「大ピンチ」を「ずかん」にして見せよう、というアイディアはどういうところから生まれたものなのだろう。

「うちは今、子どもが上から中3、小6、小4ですけど、下の子が小1ぐらいのときに、言い間違えだったり、ドジなシチュエーションだったり、日々、面白いエピソードを供給してくれて、いつか何かに使えるかも、と携帯とかにメモするようになったんです。

『大ピンチずかん』1冊目の表紙絵にもなった、子どもが牛乳パックを倒すというのも実際に下の子がやったことで、『こぼれちゃった!』ってフリーズしているんですよね。子どもにとっては牛乳パックって重くて扱いにくいんだな、これ以上こぼれないようにパックを立てて牛乳を拭くという当たり前の解決策にはなかなかたどり着けないんだな、と。とりあえずフリーズしちゃう、というのが子どもの世界なんだな、といろいろ気づきました。

 大人からすると大したことではなくても、子どもにとってはおおごとで、人生の一大事ぐらいに感じられる。そういう例をいろいろ集めたら面白いんじゃないかと思って、『大ピンチずかん』というタイトルがすぐ頭に浮かびました」

関連記事

トピックス

11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(右/読者提供)
【足立区11人死傷】「ドーンという音で3メートル吹き飛んだ」“ブレーキ痕なき事故”の生々しい目撃談、28歳被害女性は「とても、とても親切な人だった」と同居人語る
NEWSポストセブン
愛子さま(写真/共同通信社)
《中国とASEAN諸国との関係に楔を打つ第一歩》愛子さま、初の海外公務「ラオス訪問」に秘められていた外交戦略
週刊ポスト
グラビア界の「きれいなお姉さん」として確固たる地位を固めた斉藤里奈
「グラビアに抵抗あり」でも初挑戦で「現場の熱量に驚愕」 元ミスマガ・斉藤里奈が努力でつかんだ「声のお仕事」
NEWSポストセブン
「アスレジャー」の服装でディズニーワールドを訪れた女性が物議に(時事通信フォト、TikTokより)
《米・ディズニーではトラブルに》公共の場で“タイトなレギンス”を普段使いする女性に賛否…“なぜ局部の形が丸見えな服を着るのか” 米セレブを中心にトレンド化する「アスレジャー」とは
NEWSポストセブン
日本体育大学は2026年正月2日・3日に78年連続78回目の箱根駅伝を走る(写真は2025年正月の復路ゴール。撮影/黒石あみ<小学館>)
箱根駅伝「78年連続」本戦出場を決めた日体大の“黄金期”を支えた名ランナー「大塚正美伝説」〈1〉「ちくしょう」と思った8区の区間記録は15年間破られなかった
週刊ポスト
「高市答弁」に関する大新聞の報じ方に疑問の声が噴出(時事通信フォト)
《消された「認定なら武力行使も」の文字》朝日新聞が高市首相答弁報道を“しれっと修正”疑惑 日中問題の火種になっても訂正記事を出さない姿勢に疑問噴出
週刊ポスト
地元コーヒーイベントで伊東市前市長・田久保真紀氏は何をしていたのか(時事通信フォト)
《シークレットゲストとして登場》伊東市前市長・田久保真紀氏、市長選出馬表明直後に地元コーヒーイベントで「田久保まきオリジナルブレンド」を“手売り”の思惑
週刊ポスト
ラオスへの公式訪問を終えた愛子さま(2025年11月、ラオス。撮影/横田紋子)
《愛子さまがラオスを訪問》熱心なご準備の成果が発揮された、国家主席への“とっさの回答” 自然体で飾らぬ姿は現地の人々の感動を呼んだ 
女性セブン
26日午後、香港の高層集合住宅で火災が発生した(時事通信フォト)
《日本のタワマンは大丈夫か?》香港・高層マンション大規模火災で80人超が死亡、住民からあがっていた「タバコの不始末」懸念する声【日本での発生リスクを専門家が解説】
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
被害者の女性と”関係のもつれ”があったのか...
《赤坂ライブハウス殺人未遂》「長男としてのプレッシャーもあったのかも」陸上自衛官・大津陽一郎容疑者の “恵まれた生育環境”、不倫が信じられない「家族仲のよさ」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
NEWSポストセブン