国際情報

中国の研究チームが海水からウランを効率的に抽出する新技術開発と発表 2031年までの実用化を目指す

中国のこれまでの研究成果と比較して3倍もの効率アップになるという

中国のこれまでの研究成果と比較して3倍もの効率アップになるという

 中国吉林省長春市にある東北師範大学の研究チームが、海水から原子力発電の燃料に使われるウランを効率的に抽出する方法を開発した。早ければ、2031年には実用化するという。香港の英字紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」が報じた。

 同大の朱光山教授が率いる研究チームは、この研究成果を2023年12月13日付の専門誌『ACS Central Science』に発表した。研究チームは、海水中に存在するウラニルイオンからウランを捕集する電気化学手法を採用、効率よく捕集するための新たな電極材料を開発したという。

 中国は他の国に比べて多くの原子力発電所を建設しているが、中国内にも天然のウラン鉱石のグレードが低いため、輸入に頼っているのが実情だ。理論的には、海の中のウランの埋蔵量は45億トンとされ、陸上の埋蔵量の約1000倍もある。

 しかし、30万リットルの海水中にウランは1グラムしか含まれておらず効率よく取り出すのは極めて困難だった。

 このため、研究チームは電極に炭素繊維を使い、芳香族骨格からなる多孔性ポリマーをコーティングした材料を作り出した。これによりウランが効率的に抽出できるようになったという。

 中国の研究チームはこの材料を用いて24日間で1グラム当たりの海水から0.0126グラムのウランを抽出したという。

 これは、中国のこれまでの研究成果と比較して3倍もの効率アップとなり、現時点では世界最高水準となるという。中国の研究陣はさらに研究を進めて効率アップを図り、8年後の2031年までには実用化する見通しだという。

 ちなみに、100万kW(キロワット)の発電所を1年間運転するのに必要な燃料は、火力発電では石油にして155万トンが必要だが、ウランなら21トンで、実に7万分の1以下の量となる。かつて日本でも海水からウランを取り出す技術開発が進められており、世界をリードする時代もあったが、東日本大震災の原発事故を受けてストップしている。

関連キーワード

関連記事

トピックス

被害者の手柄さんの中学時代の卒業アルバム、
「『犯罪に関わっているかもしれない』と警察から電話が…」谷内寛幸容疑者(24)が起こしていた過去の“警察沙汰トラブル”【さいたま市・15歳女子高校生刺殺事件】
NEWSポストセブン
NHKの牛田茉友アナウンサー(HPより)
千葉選挙区に続き…NHKから女性記者・アナ流出で上層部困惑 『日曜討論』牛田茉友アナが国民民主から参院選出馬の情報、“首都決戦”の隠し玉に
NEWSポストセブン
豊昇龍(撮影/JMPA)
師匠・立浪親方が語る横綱・豊昇龍「タトゥー男とどんちゃん騒ぎ」報道の真相 「相手が反社でないことは確認済み」「親しい後援者との二次会で感謝の気持ち示したのだろう」
NEWSポストセブン
フジテレビの取締役候補となった元フジ女性アナの坂野尚子(坂野尚子のXより)
《フジテレビ大株主の米ファンドが指名》取締役候補となった元フジ女性アナの“華麗なる経歴” 退社後MBA取得、国内外でネイルサロンを手がけるヤリ手経営者に
NEWSポストセブン
「日本国際賞」の授賞式に出席された天皇皇后両陛下 (2025年4月、撮影/JMPA)
《精力的なご公務が続く》皇后雅子さまが見せられた晴れやかな笑顔 お気に入りカラーのブルーのドレスで華やかに
NEWSポストセブン
2024年末、福岡県北九州市のファストフード店で中学生2人を殺傷したとして平原政徳容疑者が逮捕された(時事通信フォト)
《「心神喪失」の可能性》ファストフード中学生2人殺傷 容疑者は“野に放たれる”のか もし不起訴でも「医療観察精度の対象、入院したら18か月が標準」 弁護士が解説する“その後”
NEWSポストセブン
被害者の手柄さんの中学時代の卒業アルバムと住所・職業不詳の谷内寛幸容疑(右・時事通信フォト)
〈15歳・女子高生刺殺〉24歳容疑者の生い立ち「実家で大きめのボヤ騒ぎが起きて…」「亡くなった母親を見舞う姿も見ていない」一家バラバラで「孤独な少年時代」 
NEWSポストセブン
6月にブラジルを訪問する予定の佳子さま(2025年3月、東京・千代田区。撮影/JMPA) 
佳子さま、6月のブラジル訪問で異例の「メイド募集」 現地領事館が短期採用の臨時職員を募集、“佳子さまのための増員”か 
女性セブン
〈トイレがわかりにくい〉という不満が噴出されていることがわかった(読者提供)
《大阪・関西万博》「おせーよ、誰もいねーのかよ!」「『ピーピー』音が鳴っていて…」“トイレわかりにくいトラブル”を実体験した来場者が告白【トラブル写真】
NEWSポストセブン
運転席に座る広末涼子容疑者
《広末涼子が釈放》「グシャグシャジープの持ち主」だった“自称マネージャー”の意向は? 「処罰は望んでいなんじゃないか」との指摘も 「骨折して重傷」の現在
NEWSポストセブン
大阪・関西万博が開幕し、来場者でにぎわう会場
《大阪・関西万博“炎上スポット”のリアル》大屋根リング、大行列、未完成パビリオン…来場者が明かした賛&否 3850円えきそばには「写真と違う」と不満も
NEWSポストセブン
真美子さんと大谷(AP/アフロ、日刊スポーツ/アフロ)
《大谷翔平が見せる妻への気遣い》妊娠中の真美子さんが「ロングスカート」「ゆったりパンツ」を封印して取り入れた“新ファッション”
NEWSポストセブン