“史上最低視聴率”をどう評価すべきなのか──。NHKの稲葉延雄会長が1月17日、定例会見で昨年末の『紅白歌合戦』に言及。31.9%(2部。ビデオリサーチ調べ/関東地区。以下同)と歴代最低を記録した世帯視聴率について、「指標ではあるけれども、すべてを表しているものではないなという感じはします」とコメントを残している。
昭和や平成中期までであれば、「視聴率が全てを表しているものではない」という発言は言い訳と取られてもおかしくない。
だが、“世帯”を基準とした視聴率報道はもはや限界に達している。少子高齢化の日本では相対的に人口の多い50歳以上に照準を絞れば、世帯視聴率は狙いやすい。逆に、若い世代を取り込もうとすると、その数字は伸びなくなりがちだ。
2023年「紅白歌手別の世帯視聴率ベスト10」を見ると、ある傾向が読み取れる(カッコ内は出場時の年齢)。
【2023年『紅白歌合戦』歌手別の世帯視聴率ベスト10】
1位:34.8% MISIA(45)
2位:34.3% ブラックビスケッツ(48、58、53)
3位:34.2% YOASOBI(29、23)
4位:34.1% Ado(21)
5位:33.6% 伊藤蘭(68)
6位:33.5% 藤井フミヤ(61)×有吉弘行(49)
7位:33.4% 寺尾聡(76)
8位:33.2% 石川さゆり(65)
9位:33.1% 福山雅治(54)
10位タイ:32.9% YOSHIKI(58)
10位タイ:32.9% ポケットビスケッツ(52、59、53)
10位タイ:32.9% 薬師丸ひろ子(59)
【※ランキングは2024年1月5日配信の日刊スポーツを参照。YOASOBIはAyase、ikura、ブラックビスケッツはビビアン・スー、南原清隆、天野ひろゆき、ポケットビスケッツは千秋、内村光良、ウド鈴木の順で年齢を表記】
全て2部の登場歌手であり、いずれも22時以降だった。歌唱順でいえば、伊藤蘭(紅組22組中17番目)以降になる。なぜ、この時間帯から“世帯視聴率”が上昇したのか。その要因の1つとして、五木ひろしや美川憲一、小林幸子などかつての紅白常連歌手が多数出演し、高齢者に人気の高い『年忘れにっぽんの歌』(テレビ東京系/7.6%)が22時に終わったからだと推測できる。
その直後、紅白が伊藤蘭の『キャンディーズ50周年 紅白SPメドレー』、薬師丸ひろ子『セーラー服と機関銃』、寺尾聡『ルビーの指環』という昭和のヒット曲を畳み掛けたため、世帯視聴率が上昇した面もあるのではないか。NHKは人口の多い50歳以上がチャンネルを合わせると考え、これらの曲を22時台に持ってきたのかもしれない。
テレ東で昭和歌謡を聞き終わった視聴者を取り込む作戦は功を奏した。以降も、主に平成初期のヒット曲が歌われ、世帯視聴率維持に役立ったようだ。ちなみに、上記18人の平均年齢は51.7歳。YOASOBI、Adoという20代の3人を除けば、57.2歳に跳ね上がる。