石川県能登地方を襲った最大震度7の巨大地震から2週間が過ぎた。232人の死亡が確認されているが(1月17日現在)、いまだ被害の全容は明らかになっていない。突如として日常を奪った能登半島地震だが、予兆はあった。能登地方では昨年5月にも最大震度6強の地震が発生するなど、近年は大小の地震が頻発。立命館大学環太平洋文明研究センター特任教授の高橋学さんが解説する。
「地球の表面はプレートと呼ばれる十数枚の厚い岩盤で覆われています。地震はそれらが動いたり押し合ったりすることで発生する。以前から能登地方で多発していた小さな地震も今回の巨大地震も、プレートの動きが関係していると考えられます。日本周辺のプレートの地震活動が活発化している証でもあり、別の地域でも大きな地震が発生する可能性が高まっていると言えます」
日本列島は4枚のプレートが重なり合う境目の上に位置している。高橋さんが警鐘を鳴らすのは、長年の脅威となっている南海トラフ地震だ。
「能登半島地震は、南海トラフ地震の前段階とも考えられます。政府は2018年に“30年以内に70〜80%の確率”で南海トラフ地震が発生すると予測しましたが、近年の活発なプレートの動きを見ると、あまり猶予はなく来年4月の大阪万博までに発生することも考えられます。さらに、南海トラフ地震が関東地方の南方沖にある相模トラフでの地震を誘発して『スーパー南海地震』に発展する可能性もあります」(高橋さん)
スーパー南海地震が発生するとM8.5クラスの巨大地震が立て続けに日本を襲い、太平洋側の茨城県から沖縄県にかけて、最大で30mを超える巨大な津波が押し寄せる。高橋さんの試算では、死者数は50万人にのぼるという。最悪のシナリオはこれで終わりではない。能登半島地震で危惧されるのは巨大地震だけではないと、武蔵野学院大学特任教授で地球物理学者の島村英紀さんが語る。
「プレートの動きは地震だけでなく、火山の噴火も引き起こします。プレートが動くと、深さ90〜130kmの地下でマグマが生成される。マグマはまわりの岩石よりも軽いので浮力によって上がっていき、それが地表まで達すると噴火が起きるわけです。プレートの動きが活発化しているいま、富士山の噴火を警戒しないわけにはいきません」
富士山は過去、50〜100年間隔で噴火を繰り返してきた。だが最後に大規模な噴火をしたのは江戸時代の1707年。300年以上続く沈黙は、いつ噴火してもおかしくない状態を意味している。さらに言うなれば、前回の富士山噴火の際には、その49日前に南海トラフでM9クラスの巨大地震(宝永地震)が発生した。