『源氏物語』の作者・紫式部を主人公にしたNHK大河ドラマ『光る君へ』。吉高由里子演じるまひろ(後の紫式部)は、幼少期に母を殺されたトラウマを抱えながらも明るく生きるが、史実ではこれからも数々の受難が待ち受けるという。
平安貴族の優雅なイメージとは裏腹に、宮中の権力闘争を描く物語になるのではないか──週刊ポスト(1月4日発売号)でそう予想したのが、『源氏物語』を専門とする津田塾大学教授の木村朗子氏だ。
その言葉通り、第2話(1月14日放送)でも権力掌握を狙う藤原兼家(段田安則)が、次男の道兼(玉置玲央)に「天皇に毒を盛れ」と唆すなど、不穏な空気が漂う。
「史実によれば、紫式部はこれからも多くの試練に見舞われます」
と木村氏。ヒロインを待ち受ける「5つの受難」を紐解く。
【1】父親が没落
ドラマでは紫式部の父・藤原為時(岸谷五朗)が藤原兼家の計らいで、東宮・師貞親王(本郷奏多)の教育係に取り立てられる。劇中では奔放な親王として描かれている師貞親王だが、史実ではその後、花山天皇として即位する。為時はますます出世するはずだったが、頼みの花山天皇はわずか2年で退位し、出家してしまう。
「為時の官職を得る望みは潰え、一家の栄華は暗転します」(木村氏。以下「」内同じ)
【2】結婚2年で夫が死去
ドラマでは藤原道長(柄本佑)との恋路を期待させるが、史実における紫式部の結婚相手は、なんと父・為時の友人として登場する藤原宣孝(佐々木蔵之介)。宣孝は20歳近く年上だ。
「2人の間には娘が誕生しますが、結婚してわずか2年で宣孝が亡くなってしまいます。しかも彼女は正妻ではなく何番目かの妻だった。結婚生活は幸せではなかった可能性があります」
幼い娘を抱えるシングルマザーとなった紫式部はやがて『源氏物語』を書き始め、道長に請われて道長の娘・彰子(見上愛)の女房(女官)として宮中に仕えることになる。