カナダ政府は1月16日、カナダの数十の大学が海外の研究機関や大学などと行っている、人工知能やロボット工学、最先端の兵器、宇宙・衛星技術など11の分野に渡る共同研究に対して、資金提供を打ち切ると発表した。
資金提供打ち切りの対象となるのは中国、ロシア、イランなど103の研究機関。そのうちの85が、中国の研究機関となっている。この措置は実質的に中国を標的にしたもので、中国外務省は「極めて遺憾で断固として反対する」などと反発している。ブルームバーグ通信が報じた。
今回のカナダ政府の発表は、カナダメディアによる研究資金に関する報道を受けたものだという。カナダメディアは「カナダの数十の大学が国家安全保障にかかわるテーマで、中国の数十の研究機関と共同研究を行っている」として、これらの研究にカナダ政府がカナダの大学に提供した研究援助資金が使われていると報じていた。
対象となった中国本土に本部を置く85研究機関は、中国軍事科学院、中国軍事医学院、中国人民解放軍陸軍工程大学、解放軍情報工程大学、中国警察大学、中国刑事警察学院、中国海警学院、北京航空宇宙大学、北京電子科学技術研究所、中国電子科学院、ハルビン工科大学、湖南大学、四川大学、天津大学、南京科技大学、国防大学など。
研究分野は多岐にわたっている上、中国当局はあらゆる手段を使って西側の科学研究の成果を取り込んでおり、西側の安全保障にとって重大な脅威になっているのではないかとの懸念の声も出ている。
カナダ政府が中国の研究機関との共同研究を狙い撃ちにした背景には近年、対中関係が悪化していることがある。カナダ政府は2018年、米政府の要請に基づいて、対イラン経済制裁に違反した容疑で、カナダ滞在中だった中国の通信機器メーカー、華為技術(ファーウェイ)の孟晩舟副会長兼最高財務責任者(CFO)を拘束。それ以来、カナダと中国との関係は冷え込んでいる(孟氏は2021年に米司法省との司法取引に応じ帰国した)。
また、昨年3月には、カナダでの2019年と2021年の総選挙に中国が介入したとする報道が相次いだことを受けて、トルドー首相が中国の干渉があったかどうかを調べる独立した特別調査官を任命するなどしたが、中国はこれにも激しく反発している。